6-79【試験9(クラウ視点)】



◇試験9(クラウ視点)◇


 初日、討伐の試験を終えた私とラクサーヌは、そのまま次の試験……対犯罪者クラスと同じ内容の試験を受けに【ステラダ】に戻った。


 五百体もの数の魔物の討伐証明を出して、それが認められると大きな歓声が【ギルド】内に響いた。


 総合クラスBとはいえ、何故ここまで歓迎されるのかと言えば……今年度の一年生での総合クラスAがおらず、私たちが最高ランクだったからだ。


 悪い気はしないけれど、視線が嫌。ラクサーヌには、その見事なスタイルから男たちの視線が……そして何故だろう。私には、ご年配のおじいさまやおばあさまからの温かい視線が。

 これではまるで、「孫が頑張って背伸びしました……偉いでしょう~」と言われているようで、納得がいかないわ。


「おめでとうございます。討伐任務、見事二番目の速さでクリアですねっ」


 【ギルド】の受付嬢……メイゼ・エーヴァッツさんが笑顔で言う。

 しかし私は。


「――二番?まだ一日よ?」


「だね。最速だと思ったのに……残念」


 やる気をなくすラクサーヌと、メイゼさんに圧を出す私。


「え……ええっと。あ、クラウさんの……弟さんですね、一番目」


「は?」

「え?」


 メイゼさんは、サラッと情報をいた。

 弟……ミオが、討伐一番目の速さ?

 計算上、ミオ&トレイダ組が対魔物クラスのトップのはず。

 難易度はそうとう高いのに、それを……この速さで?


「しかも一人・・で……凄いですね、弟さん」


「!!……ひ、一人!?トレイダ・スタイニーは?」


 ガタン――


「え、ええ……!?どうしたんですかクラウさん」


「クラウ。落ち着いて、カウンターに乗らない。はしたないっていつも怒るのはクラウなのに」


 私はカウンターに身を乗り出していた。

 スカートはラクサーヌが押さえてくれているけど、それが気にならないほど動揺していた。


「どういうことですか?ミオが、弟が一人って」


 メイゼさんは戸惑いながらも、気付く。


「あ、ああ。お二人は今日【ステラダ】に帰って来たんでしたね。ミオさんは……諸事情でお一人での行動が認められているんですよ。トレイダさんが……女の子だったそうで……」


「……そういう」


 なるほどね。

 ミーティア、学校側に正体がバレたのか。納得だわ。

 学校側がそのままを許すわけがない。

 となると……ミーティアは?


「女生徒は?」


「……女子として参加していますよ。お一人、余っていた子がいたらしく……って首席のクラウさんはご存知な筈ですね」


 笑顔を見せるメイゼさんは、書類を取り出しながら言う。

 そしてその書類を、ラクサーヌが受け取り。


「次の試験内容だね。次は模擬戦か……めんどくさ」


「そういう事言わないの。ありがとうございます、メイゼさん……情報も」


「いえいえ、試験頑張ってくださいね」


 私たちは【ギルド】を後にする。


「凄いね弟くん。早く戦いたいわ……ふふふ」


 怖い笑みを浮かべないで。


「そうね。ミオは……まぁ強いけど、ミーティア……余った子ってイリアだろうけど、大丈夫かしら……心配しかないわ」


 生徒としては、ミーティアも参加は認められた。

 それはいい。正式に学生として記名されている生徒なのだから当然だわ。

 でもミオだったらバレた時、あの手この手を使って防ぎそうだと思ってたから……まさかパートナーを解消するなんて意外だった。


「クラウ……?行こう、会場は近いよ」


 先に歩くラクサーヌは然程も気にしていないようで済んでいるが、他の生徒はどうなのだろう。

 今後……くすぶらないだろうか。


「くっ……ミーティア、あなたこれから大変よ……」


 頭を抱えたくなるような思いを抱きながら、私はラクサーヌを追う。

 私は私で試験を受けないと……弟のミオに先を越されたようでは、姉としての威厳が崩れる。そうはさせないわよ……ミオ。

 そうして私とラクサーヌは、初日に……三つの試験をクリアする事になる。

 対魔物クラス、対犯罪者クラス、対軍人クラス。


 長時間のはずの対軍人クラスの訓練が、どうして初日にクリアできたのかは……割愛させていただくわ。軍人さんの名誉めいよの為に。

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