6-69【冬に向けてやるべき事2】
◇冬に向けてやるべき事2◇
二日後……試験の内容が発表された。まさかの当日発表は、生徒たちも不満を覚えただろうが、これがやり方だと言われたら何も言えんだろう。
それに、生徒は全力でやるだけだからな。
「こりゃあ不満は出るよな……イライラが伝わってくる」
周りの生徒たちの空気感は最悪だ。
ピリピリというかヒリヒリというか、居心地が悪い。
俺は掲示板の前で、一通り目を通して離れる。
今日は試験当日……もう数時間で始まるんだ……俺は、一人で。
「……教官があんな簡単に許すなんてな」
学校側の協議の結果、俺は一人での参加が認められた。
昨日……教官たちに散々質問攻めをされてお疲れだが、対魔物クラスの俺たちはやることが簡単だ。
定められた魔物の討伐……ただそれだけ。
しかも、相手は大したことが無く……って言うのは他の生徒に悪いから言いにくいのだが、それでも、【アルキレシィ】を倒した事を考えれば余裕を持って
実際、その功績が認められて、教官たちも俺が単独で行動する事を許可してくれたと言うのもある。
後は……ミーティアのおかげだ。
「ティアは……いたいた。イリアと一緒だな」
少し遠くに、ハーフエルフの少女と共に書類に目を通す青髪の少女。
ただ……注目集めてるな。
『周りからすれば、いきなり現れた転校生のような感覚なのでしょう。ミーティア・クロスヴァーデンとしては、数える程しか実戦を踏んでいません。彼女の素性を調べるような人物がいれば……アウトです』
「……だな」
ウィズの言葉に、俺は
彼女は、根回しをしていてくれたんだよ。俺の為に。
ミーティアが教官たちに女生徒として通う事を伝えたのは知ってるだろ?
その時に、俺が一人になるという事も話されたらしい。
パートナーだったんだから当然だよな、その結果……昨日のような質問攻めですよ。
そしてその結果、
『冬になれば、ご主人様には新しいパートナーが振り当てられるわけですね』
「そうなるんだろうな。正直言って一人でもいいけど……ま、もう少しティアと一緒に行動したかったよな……」
『……
「……」
教官たちは、ミーティアが俺との関係をプラトニックなのかと、そう聞いた。
ミーティアは、「そういう関係ではないから、彼には罰は必要ない」……そう言ったらしい。
同じ質問は俺にもされて、俺もそう答えたよ。
事実、まだそういう関係では無いのはその通りだしな。
『……望んでは?』
「……いる」
『――ですが答えを出せないのですね。アイシア・ロクッサの事がありますから』
ウィズは
村で静かだったのが噓のように、こうして喋りまくって来る。
まるでアイズのようにうるさい。
『心外です。それとも……――ちょっとアンタ、だぁれに言ってんのよ!あたしは女神さまよ!……こうでしょうか』
「……お、おお、お前なぁ!」
ウィズは音声再生ソフトのように、完全一致の
そもそもの声が似ているから、それだけでもビクッとするのに……口調をマネされたらもう本人だっつの!
『失礼しました。ですが……これで【女神アイズレーン】を忘れる事はありません』
「――!」
ははは……そうか。
そうかもな……あいつが居なくなっても、記憶にも記録にも残るんだ。
今のアイズは、残り続けるんだ……例え、新しいアイズレーンが生まれたとしても。
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