6-43【再会の幼馴染4】



◇再会の幼馴染4◇


 夜の村の中を歩くと、昔とは大きく違う点を見つけた。


 人が多くなったことで、村が明るいんだ。

 雰囲気ふんいきの明るさもそうだし、物理的な……村の明かりも増えているんだ。

 魔法街灯はまだ設置出来ていないが、篝火かがりび松明たいまつでの灯りが、夜の村を照らしている。


「凄いでしょ?」


「……ああ。別の場所みたいだ」


 俺はどんな顔をしただろう。

 アイシアの俺を見る顔がとても嬉しそうで、それだけで分かる。

 俺は、その光景に笑顔だった。


「半年でここまで明るくなるなんて思わなかったし、夜なのに人が出てる……町みたいだよ!」


 両手を広げて、村の発展に喜ぶ。

 まだまだ全然大した事はない……それでも、まるで原始時代から進んだ気分だった。


「えへへ、みんな頑張ったから。ミオとクラウさんがいなくても頑張るぞって、張り切っててね。ミオが残してくれた建物の外観のおかげで、中を整えるだけが多かったから……皆、他に手を回せたんだよ」


「……よかった。ちゃんとやってくれたんだ」


 アイシアの言う事は、俺の願望がんぼうに近かった。

 村を離れる前、【スクルーズロクッサ農園】で新しく働く人や、警備隊の人たちに用意した家……以前にミーティアとジルさんに用意した家と同じく、中身はからのプレハブ小屋のようなものだな。

 それを有効活用して、各々おのおので作業をしてくれたようだ。


「もっちろん!皆、意外とミオの話を聞いてるよ?……あの時のミオの顔、「大丈夫だろうなぁ」……って顔してたからっ」


 声色を変えて、いぶかしむような顔をする。


「――ちょ、それ俺の真似か……?」


「あははっ!似てるでしょ?」


 かがんで、俺を見上げるアイシア。

 そっと目を逸らす……駄目だ、可愛い。

 頭では分かっていても、可愛いものは可愛いんだよ畜生ちくしょう!!


「ね……やっと普通に話せた」


 安心したように息をき、胸をなでおろす。


「あ……」


 そうか、アイシアだって緊張してるんだよな。

 会話の中で探ってたんだ、この半年で開いてしまった時間を。


「……ダセェな、俺」


「え?どうしたの急に」


 しゃがみ込んで、俺は頭を抱えた。

 それを見てアイシアもしゃがみ込み、俺の顔をのぞく。


「いや、俺さ……アイシアに会うのが怖かったんだ」


「あー……うん。わたしもだよ」


 同じだ。

 でも、俺の場合は少し話が違う。


「伝えたいこと、伝えなきゃいけない事が沢山あって……アイシアの事、考えて無かったって気づいてさ……ダセェだろ?」


 例え結論がもう出ていようと、これは反省だ。

 自分の事ばっかで、この子の事をないがしろにして。

 心底ダセェよ……男だろ、しっかりしろよ。


「うん。わたしもだよ……でもね、今日はいいじゃん?」


「え?……いや、でもさ」


 アイシアは立ち上がって、後ろを向く。


「だって、ミオはさっき戻って来たばかりじゃない。いいんだよ、あせらなくても。村は逃げないし」


 だろうけども。


「それに、わたしも逃げないよ……」


「アイシア、俺は――」


「今日はいい。その話……今日は聞かないから」


 笑顔を見せて、断言するアイシア。

 そこまで言われたら……言えん。


「……うん。分かったよ」


 その配慮は、俺の為か。

 それとも、自分の未来への不安からか……俺には分からなかった。

 ただアイシアのその優しい笑顔は、曇りのない心を表しているようで、ミーティアを選んだという決断を告げられない俺は、自分が情けなくなった。

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