6-41【再会の幼馴染2】



◇再会の幼馴染2◇


 俺はコハクのあとをついて、色々と見て回っていた。

 そう言えば、知らない人も多いけど……軒並のきなみ丁寧な挨拶してくれるな。


『事前に、ご主人様の外見情報を伝えられている可能性があります。村長の子息ですので、失礼があればという考えも透けて見えますが』


「なるほどねぇ」


 となると、俺の知らない顔は農家とか商人か。

 【スクルーズロクッサ農園】で働きたい求人者の可能性もあるな、若い娘さんや青年も多いし。


『はい。ご主人様に気に入って貰えば、働き口も簡単と考えているのでしょう』


 それでこちらをチラチラ見てるわけね。

 男も女も、考える事は一緒か……こんなド田舎で働き口を見つけるのは難しい、自給自足は出来ても、家族となれば足りないものも多くあるからな。


 そういう時は大概……親の言葉だろうな。


 そんな親の感情で利用されたら、子供が可哀想かわいそうだよ。

 ……って、ミーティアの事が無ければ何とも思わなかったかもな。


「おっ……母さんだ。はぁ……相変わらずの美人さんだな」


 目に見えた、我がお母さま。

 レギン・スクルーズ……四十歳。

 見えねぇ……どうみても二十代後半だろ、あの容姿。


『能力――【美貌びぼう】の影響も勿論もちろんありますが、初めから持ち合わせていたDNAが大きそうです』


 つまり、初めから美人だという事っすか。

 改めて、美男美女のスクルーズ夫婦には感謝だ。


『転生者の中には、性別が変わった人も多く存在します』


 マジか……そう言えば、産まれる場所は選べないんだったな。

 あんまり親ガチャとかは言いたくないが、俺は恵まれ……てるのか?


『ノーコメントです』


 だよなぁ……あの女神が何か考えているとしか考えられん。


『……』


 ……お。母さんの後ろに、オレンジ色の髪の毛が見えた。

 忙しそうに宴会の手伝いをしているその姿に、心臓が鳴った。


(アイシア……アイシアに、言わないとな……)


「――あら、ミオ!!」


 母さんと目が合った。

 ゆさゆさと駆けて来る……ちょっと母さん?

 それは止めようね、周りも見てるし……親父殿が嫉妬しっとするから。


「母さん、ただいま……」


「あぁ、よかったわ無事で……毎日毎日、お祈りしていた甲斐があるわ……ありがとうございます、神様」


 俺を抱き寄せる母の温かさに、心が浄化される気分だ。


「あはは……」


 でも、神様か……母さん、その神様、直ぐそばにいるよ――汚部屋の女神だけど。

 そう言えばあのポンコツ女神はいないな……


「あ……ミ、ミオ……」


 母さんの後ろから、ゆっくりと確かめるように歩いて来て、恐る恐ると言った感じで話しかけてくるアイシア。


「――アイシア。その……久しぶり」


「う、うん……本当に」


「「……」」


 気……まっず!!

 あれ、なんで?なんでこんなに、話しにくいんだ??


「あらあら……それじゃあ、お母さんはあっちに……行くわよコハク」


「う、うん……」

(がんばっ、ミオにいちゃんっ)


 ムンッ――と拳を俺に向けて、コハクは母さんと宴会場に行った。

 残されたのは、俺とアイシア。

 半年ぶりの再会を果たした幼馴染……アイシア・ロクッサ。

 おどろくほど綺麗になった、俺の許嫁いいなずけの女の子だ。

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