6-40【再会の幼馴染1】



◇再会の幼馴染1◇


 どうしてこうなった……俺はただ静かに帰郷をして、あの子を休ませてからこっそりと知人に挨拶あいさつをして、それで直ぐに帰るつもりだったんだ。

 それなのに……なにこの状況??


『――宴会……ですね』


 そうである。

 俺が今いる場所は、村の集会所があった場所だ。

 建物は俺が【無限むげん】で立て直しており、公民館のような広さまで拡張をしていた……そこに、無数の人たちが集まっていた。


「……」


 言葉も出ないぞ。白目をきそうなほどの展開に、脳内処理が正常に働かないって。


『あの少女は深く眠っていますし、少しは羽を伸ばしても平気でしょう』


「そ……」


 そうは言うけどなウィズ、多分この状況……ガルスあのばかが招いた事だぞ。

 あれだけ騒がしいのは止めてくれと念押ししたのに、なにこれ……宴会?

 望んでないですけどっ!


「はぁ……マジで」


「ミオにいちゃんっ!」


「ん……?」


 この声、我が妹……コハクだ。

 学校があったからまだ会って無かったけど、そうか……来たのか。


「おお!コハ……ク!?」


「お帰りっ!」


 コハク・スクルーズ。

 俺の妹で、今月誕生日で十一歳になった……可愛い妹君。

 少し前まで俺の事を名前で呼んで、都合のいい時にはおにいちゃんと呼んでくるような小悪魔系……そんな妹なのだが。


「あれ、どうしたの?そんなに目と口開いて……そんなにコハクおかしいかなぁ?」


 自分の身体を確認して、隅々までチェックする。

 上から下までを確認して、触診するように触る。


 そう、その凹凸おうとつのある身体を。


「い、いや……その、大きくなったな。いろんな意味で」


 自然と瞳を逸らしそうになってしまう。


『残念ですが、クラウお姉さまの身長を超えています……成長期でしょう』


 うちの女系は基本的にナイスバディだった……だからコハクが成長したらこうなると、想像は出来ていたさ……でも、誰かさんには一縷いちるの望みがあった筈なんだ。

 もしかしたら……自分と同じで、ちんちくりんのままだと!!


『クラウお姉さまは言ってませんよね、それ』


 絶対に思ってるはずだ!だってコハクの考え方とか行動力とか、クラウ姉さんそっくりだぞ!!


「それにしても……」


「なぁに?」


「い、いや……なんでもないよ。男の子には気を付けるんだぞ?」


 可愛い妹の両肩に手を置いて、俺は真剣に言う。

 母さんをはじめ、レイン姉さん、コハクまでそのナイスバディに仲間入りだ。

 村の人が増えてきている以上、出会いも増えるしクソったれなやからも増える……狙われたら厄介だろ?


『シスコンですね。姉的にも妹的にも』


 シスコンで結構だ!

 守れるものを守って何が悪い!レイン姉さんがあんなに美人で、こんなに可愛いコハクだぞ、自衛できるクラウ姉さんとは違って、守らなければ!!

 それでなくても、レギン母さんは昔にどこぞの坊ちゃんに迫られてるからな……何もなかったからいいものの、一家崩壊の危機もあったんだ。


「よくわかんないけど……うん、わかった」


 それは分かってないんだよ、コハク。


「そっか、ならいい」


「うんっ、じゃあ……コハクはママを呼んでくるね!」


 走り出す。

 こらこら、室内で走るんじゃありません。


「いや、お兄ちゃんも行くから!」


 もう母さんも来てるはずだ。

 レイン姉さんに聞いた、新しい宿の仕事を終えて……アイシアと一緒に。

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