6-21【紛れもない俺の気持ち】



◇紛れもない俺の気持ち◇


 寮に帰る時には空も暗くなって、続々と生徒も帰って来ていた。

 したがって、ミーティアは【幻夢の腕輪】でトレイダに変身して、二人で帰寮だ。


「つ、疲れた……」


「……そう、ね。でも……あのおばあちゃんも、喜んでたし」


 そう。【常闇の者イーガス】の迷惑な奴らに旦那さんの形見を盗まれたおばあさん……しっかりと届けたよ。あの巾着袋きんちゃくぶくろ


「だな。お礼もくれたし、人助けもいいものだよ……」


 それがきっかけになって、今日の一日なんだけどな。

 そんなお礼の品……まさかの現金。

 頂けない。と断ったが、泣きながら渡そうとするもので、仕方なく受け取った。


「――着替えて来るね。待ってて……」


 ミーティアは脱衣所へ。

 ちゃんと、俺が話をする事も分かってる。

 何を言われるんだろうと……ソワソワもしてるだろうな。


「……ん?」


 ベッドに座って、上着を脱ぐ。

 脱いだ上着に、違和感を感じて……中をチェックする。


「――あ」


 内ポケットの中に、それはった。

 【オリジン・オーブ】……原初の精霊の力が封じられた、宝珠だ。


「あの子が持ってたやつ、持ってきちまった……」


 あちゃ~、と。俺は頭を抱えた。

 そうだな、あの時なんとなく、アレックスに見せたらいけない気がして、仕舞ってたんだ。それを忘れて、そのままだ。


「【オリジン・オーブ】か……なんでこんな貴重な物を、あの子が」


 世界最小数種族【竜人ドラグニア】……そんな女の子が持っていた、精霊の力が封じられたアイテム。


 そんな物、考えるだけでも……


「き、きなくせぇ」


 俺がその宝珠をまじまじと見ていると、ミーティアが戻って来る。

 サッ――とベッドの中に宝珠を隠し。


「もういいのか?」


「ええ……ごめんなさい」


「いや、謝る事じゃ」


 暗いな……分かるけどさ。

 俺だって、多少は思う所があるよ。

 初めから話してくれていたら、とか……どうしてそんなに難しい方向に進むんだ、とか……さ。


 でも、それは俺の押し付けになってしまう。

 ミーティアの考えは聞いたけどさ、正直言って……深くは理解出来なかったよ。

 俺に知られたら、俺が同情するって……それならそれでもいいじゃないか。

 自分勝手なのはいいよ、俺だってそうだ。

 クラウ姉さんだって、イリアだってそう……皆、自分勝手に生きてこその人生だ。


「話、いいか?」


「うん」


 でも……今のミーティアの考えは否定させてもらう。

 俺は俺だ。例えミーティアがどう考えていようとも、俺は俺をつらぬく。


「「……」」


 二人で、カウンタータイプのキッチンに対面。

 俺が座り、ミーティアがキッチン側。

 紅茶をれ……準備は完了だ。


 俺の気持ちを、紛れもない本心を……君に伝える。

 君が迷っても、悩んでも……君が君らしく、最良の道を選べるように……選択出来るように、俺が君の――道しるべになるよ。

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