6-19【種族1】



◇種族1◇


「【竜人ドラグニア】?」


「そうじゃ。世界で最強と言われる、最小数の種族……世界全体でも、千人もおらんと言われておるのぉ」


 そんな珍しい種族の女の子が、どうして……いや、珍しいから、【常闇の者イーガス】に狙われたのか?


「お前さん、この娘をどうするのじゃ?」


「はい?どうするって……俺たちは保護しただけで、別に身内って訳じゃ」


 じいさん先生、何が言いたいんだ?


『――【竜人ドラグニア】の保護は、各国で保護の対象外らしいです……国に預けることは出来ません』


 なるほど……だからアレックスは、知ってて言わなかったんだな。

 面倒臭めんどうくさい事になると、分かってたんだ。


「つまり、俺たちが面倒を見ろと?」


「うちでは見られんからなぁ……治療は出来ても、置くことは出来んよ。精々今日一日は、ベッドの空きはあるからいいがのう」


「は、はぁ……」


 遠回しに連れて帰れって言ってるよな?


『それほど、あつかいが難しい種族なのです』


 【竜人ドラグニア】か……俺は初めて聞いた種族だけど、そこまで珍しいのか。


「魔族やエルフ、獣人なんかとは違うんですか?」


 小数種族なのは分かったけどさ、保護の対象外とか、あつかいがひどくないか?


「そうじゃなぁ……この世界の種族の割合は、人間族、魔族、天族で三分されておる」


「てん……ぞく?」


「なんじゃ、知らんのか?」


「い、いや……そんな事は?」


 勉強不足ですみません!

 俺、この世界でのまだ二カ国しか知らないんです!

 しかも人間族とエルフ、魔族に獣人……それくらいしか会ってないんです!


「天族と言うのはの、その昔地上に降り立った天使様……その子孫たちじゃよ。長い年月で翼と輪を無くし、姿は人間族と瓜二うりふたつじゃが……身体能力が高い高~い種族じゃな。それと、人間族よりは長生きじゃ。それに老いが遅い」


 なにそれうらやま。

 じいさん先生は続ける。


「特徴的なのは、その緑色の眼……じゃな」


「……へ?」


 緑色の……眼??

 俺は、衣料品などが入れられたガラスケースを見る。

 そこに映る自分の瞳を見て……


「――俺じゃん!?」


『……』


「はぁ?……なんじゃ、お前さん自分の種族も知らんかったのかえ?」


「……う」


 人間族だって思うじゃん。

 産まれてから、誰も説明してくれていないしさ……村での人たちも……って、スクルーズ家みんな緑色!!みんな天族じゃねぇか!!


「ああ、お前さんは【サディオーラス帝国】の田舎出身じゃったか……」


 じゃあ仕方ないか……みたいな態度すんなよじいさん先生。

 でもそうか……瞳の色で、種族も判別できるのか。

 そう言えば、村には緑色が多かったかも……スクルーズ家を始め、ミラージュさんやアドルさん、ガルスもそうだったな。


 もしかしなくても、【豊穣の村アイズレーン】は……天族の村なのでは?

 それを知らなかった俺よ……控えめに言っても、恥ずいよ――父さん、母さん。

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