5-113【黒き獅子と半端な子11】



◇黒き獅子と半端な子11◇


 【紫電しでん】……正式名称、violetバイオレットofオブlightningライトニングtheblowブロウ

 すみれの稲妻、その一撃……って感じか?


 色が薄い紫で、電撃の力……それは足にしかまとえなくて、一瞬で移動できる能力……ではなく、電撃による加速で超高速移動が出来ると言う感じだろうか。

 なら瞬間移動とか転移にしろよとツッコみたくなったが、注視するべきは……blowブロウだ。


 能力の中枢ちゅうすうを占める、その意味……それは――一撃・・だ。


「――行くぜ、【紫電しでん】!!……超加速!」


 まるで消えるよう移動し、全てがスローに見えるような感覚で周りを見る。

 この【紫電しでん】って能力……身体への負担がヤバい。

 もしも【丈夫ますらお】がない状態で覚えていたら、身体がバラバラになってたかもしれん。


 俺は超加速のいきおいで、【極光きょっこう】の光と【紫電しでん】の稲妻を纏ったまま……【アルキレシィ】の腹部に、蹴りをかました。


 クラウ姉さんが宙に飛びあがり、【孔雀貫線光】ピーコックレイを連射して牽制してくれていたおかげで、難なく命中だ。

 ドン――!!っと、めり込むように腹蹴り。


「ギャイン――!!」


 お~お~、デカくても鳴き声は猫ですよ。


「よっとっ!【紫電しでん】!!」


 【紫電しでん】は、一度攻撃に発生させると消滅する。

 ため込んだ雷を、一気に解放するかららしい……【叡智えいち】さんが言ってた。


 出てこなくなった【叡智えいち】さんこと、ウィズがどうしているのかは知らないが、詮索せんさくしている場合でもないからな。


「――それズルくない!?」


 クラウ姉さんが空中から光線を連射しながら、叫ぶ。

 ズルくないです、それに身体の負担だって凄いんだぞ!?

 飛びながら拡散攻撃してる姉さんの方がズリぃよ!


 移動の度に、着地点に稲光が発生する。

 ザザ――っと、クラウ姉さんの真下に滑り込み。


「ズルくないっ!――【煉華れんげ】っっ!!」


 光線を飲み込むようなほどの、獄炎を放つ。

 ゴォォォォ――と、【アルキレシィ】を飲み込むが……どうだ?


「――グルワァァァッッ!!」


 魔力を帯びた咆哮ハウルで、打ち消された。

 マジかよ……結構魔力籠めたぞ。


「馬鹿ミオっ!閉鎖された空間で炎なんて使わないでよっ!あっっつ!!」


「――あ。ご、ごめん!」


 怒られた。

 クラウ姉さんは、炎に暴れる【アルキレシィ】を見ながらゆっくりと下降し着地。


「ちょっと……脱ぐわっ」


「ごめんって!」


 姉さんはおもむろに厚手のコートを脱ぎ捨て、叩きつける。

 あ、その翼……生えてても脱げるんだね。


「汗だくじゃん」


「――誰のせいよ、誰の!」


 俺ですね。すみませんでした!!

 だけど、マジで暑い……選択ミスだよ畜生ちくしょう、ウィズが居れば間違えなかったのに。

 隠さずに戦える事に興奮こうふんして、能力選択間違えた!!

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