5-111【黒き獅子と半端な子9】



◇黒き獅子と半端な子9◇


「このっ――デカ猫ぉぉっ!!」


 クラウは迫る大きな爪の一撃を、身をよじってかわす。

 しかし、背に生えている魔力で出来た【天使の翼エンジェル・ウイング】に、その一撃を受けてしまった。


 ザンッッ――


 右翼をぎ取られ、落下し始めるクラウ。

 しかし更に、【アルキレシィ】は宙にもかかわらず身体をひねって。


「――なっ」


 追撃でダメージを与えるつもりか……それともそのまま喰うつもりなのか。

 空中とは思えない姿勢制御は、猫科のものだなぁ……などと、暢気のんきにもそんな事を考えてしまうクラウだったが。


「――【青い星ブルースター】!!」


 閃光……クラウの真横から、青い一閃が通り過ぎる。

 更には二本の双刃が、飛翔して【アルキレシィ】に襲い掛かった……と言うよりも、完全にクラウをかばう攻撃だ。


「ミーティア、イリア!」


 空中で、私は下を見る。

 青い一閃はミーティアの弓術魔法で、飛翔する刃はイリアの【念動ねんどう】による攻撃だ。


 青い一閃は【アルキレシィ】の顔面に直撃、双刃は爪をはじき戻って行く。

 そして、空中で姿勢バランスを悪くするクラウに。


「姉さんっ!」


 クラウの目の前に、一瞬で現れる……ミオ。

 その足には紫色の魔力光がバチバチとかがやいており、先程までミオが立っていたであろう地面にも、同じく紫色の電撃がバチバチと名残なごりを見せていた。


「ミオ……ごめん、油断した!」

(ミオの魔法……いや、きっと能力。ミーティアとの訓練で見せた、一瞬で移動する……新しい力)


 ミオはクラウを抱えて、【アルキレシィ】を一瞬だけ見やると。

 シュン――と姿を消した……クラウを抱えたまま。





 シュン――ザザザッ――!!

 地面に稲光る、紫色の電撃……俺が着地した衝撃で走った、稲妻だ。


 俺は【アルキレシィ】を見る。ミーティアとイリアの攻撃を受けて、宙から落下した【アルキレシィ】は、ジタバタと暴れている……そこに、ミーティアが魔法の弓で追撃を加えていた……ダメージは、残念ながら少なさそうだが。

 よし、でもこれなら……直ぐに追撃に参加できるな。


「よっと……クラウ姉さん、平気?」


「え、ええ……ありがと」


 超絶に軽い姉を降ろして、俺は【アルキレシィ】に向おうとする、が。


「ミオ……今のも、能力なの?」


 俺の背に向かって疑問を投げかけるクラウ姉さん。


「……!」


 で、ですよねー。


 【無限むげん】はもう隠さず使っちまったけど、その他の能力は説明してない。

 多分、クラウ姉さんはさっしが付いているんじゃないかな……特に、【極光きょっこう】とかなら。


「【クラウソラス】をはじけるあの光の魔法も……そうなの?」


 やっぱりね。


「――そうだね。そうだよ……能力、【極光きょっこう】って言うんだ」


 「名前そのままじゃない……」そんな視線を感じるけど、そう言えば名前言ってたかもな。


「ねぇミオ……地面を操作するやつと、その【極光きょっこう】……その足の電撃もだけど……あの剣もそうよね?」


 剣……【カラドボルグ】の事だ。


「もしかして、あの時にアイズレーンに貰ったの?……能力を」


 お。これはあれだ……都合よく解釈してくれてる。

 別にアイズに貰ったってのはうそでもないし、この場はそれでもいいか。


「……そんなとこ」


 あ、やっべ……小声になったかも。


「――うそね」


 ううううそじゃないし!

 始めから持ってただけで、アイズから貰ったのはうそじゃないし?


 そのジト目やめてくれ、背中越しでも分かるぞ!


「う、うそではないです……」


「なんで敬語?」


 だって……怖えんだもん。


「……いや」


「……はぁ。まぁいいわ……行きましょ」


 あぁ……話す内容が増えた。

 でもいいか、諦めよう。


「分かった……【アルキレシィ】の体力を、削ろう」


「ええ」


 だけどこれで、もう遠慮なしに攻撃できる。

 転生者だとバレて、能力も気付かれ始めてる……クラウ姉さんだから安心出来るのであって、他の転生者だったら話は変わるが。

 それでも、俺は……今持てる能力ちからで、イリアの目的を達成させてやる!!

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