5-73【魔物図書での吉報2】
◇魔物図書での
串焼き露店の店主のイケボに、俺とクラウ姉さんは
そこには、見覚えしかない銀髪に
一度は戦い、その実力も知っている……【リードンセルク王国】の元・騎士団長――ジェイル・グランシャリオがいたのだった。
「「――ジェイル!?」」
俺とクラウ姉さんは声を合わせて、串焼きを差し出して来た店主の顔を見て
しかし、その店主はと言うと。
「――くっ……やはりお前たちだったか」
どうやら俺たちだと気付いていて、やり過ごそうとしていたらしい。
つーかなにしてんの?【クロスヴァーデン商会】で働いてんだよな?あんた。
「な、なにやってんのよ……こんな所で。予想外過ぎて声裏返ったわよ」
本当だよ、眠気まで吹っ飛んで行ったぞ。
俺とクラウ姉さんの刺すような視線に、ジェイルは顔を
その時点でやましいんだって。
「……し、仕事だ」
仕事~~~!?
「――仕事って、串焼き屋を始めたのか?……【クロスヴァーデン商会】の仕事は?」
なんでこの人が、朝早くから鳥の串焼きなんて焼いてんだよ。
「……やめてくれ。それを言われると心に来る――あと、速く食え……冷めるだろう!」
「あ、ごめんなさい」
「す、すまん」
俺とクラウ姉さんはジェイルからようやく串を受け取り、ガックリと
「……これは手伝いでな、今……【クロスヴァーデン商会】では人手が足りん。大半が王都に出払っているんだ」
国一番の商会が人手不足?
それも……出払ってるってのは、出張してる……って事か。
王都って確か、北だよな?
「それで人手を
クラウ姉さんは目元を笑わせながら言うが……なんか
「くっ……そんな目で見るな!これも立派な仕事だと、ジルに言われて……」
なるほど、ジルさんの命令か。
この人、俺と戦って負けて……その後【クロスヴァーデン商会】で
まぁ、それだけの事をしてたんだろうから兄妹の事に口出しはしないけど。
「それはそうね」
「そりゃそうだ」
まあだけど、この露店のおかげで……一般人の俺らが腹を満たせるんだからな。
そう思えば、熱い内に食うべきだな。
おおっ……串焼き
「それにしても、相変わらずジルさんの言う事には素直に
「そうね、
俺とクラウ姉さんは畳みかけるようにジェイルの姿を見ながら言う。
黙々と鳥の串焼きを売るダークエルフのイケメンに、正直……笑みが途切れない。
そんなジェイルは
逆に俺とクラウ姉さんに話を振ってくる。
「――いや、俺の事はいい。それよりもお前たちだ……まさかお前たち、こんな朝早くから姉弟でデートか……?」
おい、どこをどう見たらデートに見えんだよ。
どう見てもパシらされてる
「そうよ」
「ちげぇよ」
はい両極端。
「――え」
横下を向くと、自信満々の姉が無い胸を張っていた。
「なに?」
「い、いや……なんでも」
えぇ……クラウ姉さんはデートのつもりだったんすか?
そのために待ち伏せしてたの?普通に怖ぇんだけど。
いやしかし、切り替えよう。
これから予定があるんだからな。
俺はわざとらしく
「ゴホン……違うよ。これから魔物図書に行くんだ……情報を集めにさ」
「魔物図書……そうか、それは
お、おお……そう来たか。
変なことを言われたくなかったら、これ以上追及するなって事ね。
「分かったって、悪かったよ……そんじゃまぁ、俺たちは行くよ……その、串焼きは
「そうね。
クラウ姉さんは野菜だけどな。
「ああ、そうか……それはよかった。ではさっさと行け」
シッ――シッ――と、追い払うように俺とクラウ姉さんを手で
いやいや、そこまで見られたくないなら初めから断れよこの仕事。
そんなジェイルに、ミーティアの事を聞くことも忘れて……俺とクラウ姉さんは魔物図書に向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます