5-14【帰り道】



◇帰り道◇


 今回の依頼の目的は、【スケルトン】の種類……数体を確認する事だった。

 見つけたのは【スケルトンウォリアー】【スケルトンアーチャー】のみ。

 探していたのは、【スケルトンコマンダー】と呼ばれるリーダー格の魔物だったのだ。

 ロッド先輩が言ってた、アイツ・・・の事だな。


 しかし。


「で、出なかったな……コマンダー」


「そうですね、三日もねばったのに……」


 俺とイリアはお疲れ気味だ。

 言わずもがな……魔力切れです。

 俺は前日の【譲渡じょうと】の反動で。

 イリアは戦いの結果だ……頑張りすぎたんだよ。


 二人の言葉に、まだ元気なロッド先輩が言う。


「仕方が無いさ、依頼は失敗だ。期限もあるのだからあきらめざるを得ないだろう」


「まぁ、ですよね……」


 だが、今回の最大の目的はイリアへの【譲渡じょうと】だったし、結果的にはプラスに転じたと思うんだよな……――いい訳じゃねぇよ。


 そして現在、俺たちは帰りの馬車の中だ。

 夕方までねばったが、結局【スケルトンコマンダー】は出てこず、【ステラダ】に帰ることになった。

 ん~……まぁでもオッサンも怒らんはずなんだよな。


 何故なぜなら。


「それにしても、スケルトンの素材凄い数ですね……」


 イリアが言う。


 そうなんだよな……コマンダーを探しに探した結果、【スケルトンウォリアー】と【スケルトンアーチャー】を倒しまくって、素材が落ちまくったんだ。

 俺の能力――【強奪ごうだつ】もそうだけど、ロッド先輩とイリアが倒した魔物も、結構いいものを落としたんだ。


「ここまで素材が落ちるのも珍しい……スクルーズ、お前――」


 いちいち俺を怪しむのやめてください。


「いや、俺だけじゃないでしょ!ロッド先輩とイリアだって充分倒してましたよ!」


 俺の背にある大量の荷物。

 明らかに俺のが多いのは明白で……しかも当然、高品質だ。


 正直これを売るだけで……もうウハウハですよ。

 つまり、オッサンにこの素材を渡せば依頼の失敗はチャラだ。

 まぁ、評価は貰えないが……イリアもな。


「ふむ……そうか?」


 ロッド先輩がイリアに顔を向けて言う。


「そうですね……でも私は、戦い方も見出みいだせましたし……嬉しいことだらけでしたが」


 遠慮えんりょがちに、イリアは大事そうに荷物をかかえていた。

 初めての素材入手らしいからな、嬉しいんだろう。


 だけど、まだ問題はある。

 俺はイリアの横に置かれている短剣を見る。

 【念動ねんどう】を使えるようになったのはいい。

 だが、そうなると武器も重要になって来るよな。


 普通の短剣だと、耐えられないんだよ……【念動ねんどう】の魔力といきおい、そして遠心力に。

 特に安物だと……負荷がな。

 【ステラダ】に帰ったら買いに行こう……イリアの新しい武器をな。


 ロッド先輩が言う。


「そうか、それならいいさ。よし……いいかお前たち、まずは中継点の【ポラ】に戻る。そこで一泊して、朝には【ステラダ】に帰る……いいな?」


「了解です」

「かしこま……あ、了解です!」


 口元を押さえて赤面するイリア。

 あはは……メイドのくせは抜けないんだな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る