4-88【何かあったのか?】



◇何かあったのか?◇


 俺がレイナ先輩と会ってから二日がった。

 ミーティアには、俺がレイナ先輩を手伝うと言う事をその日のうちに伝えてある。

 なんだけど……その日からさ、ミーティアの様子がおかしいんだよ。

 よそよそしいと言うか、常にソワソワしている気がするんだ。

 それは昨日、そして今日も同じで……訓練をしている時も、校内を回っている時も、部屋にいる時もそうだ。


「……お腹空いたね、ミオ」


「ああ。そうだなぁ……」


 普段と同じようにしゃべり、普段と同じように接する。

 だけど、分かるんだよ。

 ふとした仕草しぐさ、ちょっとした挙動が……少しだけど違うんだ。


 寮の食堂で、俺とトレイダは昼食だ。

 俺は焼き立てのパンを、トレイダは【ホロン】と呼ばれる麵類……フォーに近いのかな?を……ちゅるちゅるとすすっていた。


「明日はレイナ先輩の手伝いなんだよね?」


「ああ、そうだよ。えっと……【ガルパー湖】って所に、【サミダーク】って言う半魚人を調べに行くんだ」


「あ~、中難易度だね。大丈夫?」


「……うん」


 そうだな……また・・だ。


「なに?心配なのかい?僕も一緒に行こうか?」


 これもそう、また・・だ。


「いや……あのさトレイダ」


「なんだい?」


 再放送なんだよ、ミーティア。


「この話、昨日もしたよ?」


「――え」


 そうだ……計三回目なんだよ、この話。

 その日、昨日、そして今。


「そ、そうだっけ……ごめんね、疲れてるのかなぁ」


「……そう、かもな」


 今回の依頼サポートは、俺のソロだ。

 そういう条件だからな……仕方がない。

 それに、ミーティアには他にやって貰いたい事があったからなのだが、こうなると実に心配になってしまう。


 なんとも微妙びみょうな空気の食事を終えて、部屋に戻る。

 明日の準備をしないとな。


 レイナ先輩によると、【ガルパー湖】には半日程度で着くらしい。

 目的は……さっきも言ったが【サミダーク】と言う、半魚人の生態調査だ。

 生態調査になぜ中難易度?と思うかもしれないが、道のりと、道中に出てくる魔物が面倒らしい。

 それと、【サミダーク】自体も。


「よ、っと。こんなもんかな?」


 水場という事で、バックには着替えが数着。

 調査だけならすぐに帰れるという事だし、荷物は少ない。


「……」


 俺はちらりと、姿を戻したミーティアを見る。

 ベッドの上で体育座りをして、ボーっと何かを考えている様子だが、聞くべきなのか?

 別に「聞いてくれ」オーラが出ている訳ではない。

 単に自分自身と向き合っている感じだが……俺が関わっているのだろうかと言うことが気になる。


 俺のせいなら謝りたいし、違うんだとしても理由はなんだ?


「なぁミーティア。明日はイリアとの訓練だけど……大丈夫か?」


 イリアは、ここ数日忙しい。

 なんでもロッド先輩の指示で、クレザースの家に戻っていたらしい。


 内容は詳しくは知らない。聞けていないからな。

 でも、イリアが訓練をする事に口出しはしてこないらしい。

 むしろ「頑張れ」と声をかけられたと、そこだけは嬉しそうに言っていた。


「え、ええ。平気よ、訓練だけだし……話は聞いておくからね」


「うん。頼むよ」


 グレンのオッサンの依頼をこなして、最終的には【アルキレシィ】に関する依頼を出させる。

 俺とミーティア、明日はバラバラの行動だ。

 それがどう転ぶか、何が起こるか……誰にも分かりはしないんだ。

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