4-60【一緒に訓練を1】



◇一緒に訓練を1◇


 翌日行動とは言ったが、相手の事もある。

 俺はロッド先輩が受ける依頼や、訓練の日程を調べて……そして数日後だ。


 前回と同じ場所、学校に併設へいせつされた訓練場に、俺はいる。

 相変わらず、失敗によって出ばなをくじかれた俺とトレイダに、サポート依頼は来ず、俺は訓練に精を出していた。それしかなかったからでもあるが。


 今回はしっかりトレイダもいるよ。

 二人で一緒に訓練の最中だ。


「いいものだねミオっ!こういうのもさぁ!」


「――だなっ」


 得物えものの違う俺たちでは、そもそも出来る訓練が違う。

 では、いったい俺とトレイダが何の訓練をしているのかというかと。


「じゃあ行くぞー、トレイダ」


「大丈夫だよ!お願いっ」


「了解だ――【砂の壁サンドウォール】!ほっ……よっ……こんなもんか?」


 ゴゴゴゴゴ――と、【無限むげん】で五ブロックほどの土のかたまりを迫り上げる。

 長方形のサイズで、人間のような形に整える。


「いいね!これでいくらでもれるよっ!」


 俺が【無限むげん】で用意したのは、矢をる為の的だ。

 対魔物クラスである俺たちの訓練なのに人間の形にしたのは、魔物を使役しえきするタイプの敵との戦いを想定したものだ。

 村に一度、来てるしな。


「よし。それじゃあ俺が邪魔するから……トレイダはけながら矢をってくれ」


「――分かったよ!」


 俺は移動を開始し、手に石を持つ。

 持っている石は数十個。【無限むげん】であらかじめ小さくしたものだ。


 それを、隠れながらトレイダに投げるんだよ、飛び道具や魔法を想定してさ。

 石を投げる直前に元の大きさに数値を戻し、加速数値を上げれば、手軽に弾丸が出来るという訳だ。

 無論むろん、威力は最小限にとどめてな。

 じゃないと、トレイダが怪我しちゃうだろ?


「よーい……ドン!」


「――え?」


 あ、つたわらなかったみたいだ。

 でもいいだろ、敵が不意打ちをしてくる可能性だってあるしな。


「ほれっ!」


 ビュイン――!!と、トレイダの横を通過していく石の弾丸。

 これは使えるな……当たればだけど。


「ほいっ、ほいっ。ほいっと!」


「わっ――ちょっ!」


 ビュン!ビュビュン!

 弓を構えるところに、すかさずノールックで投げ込む。

 数値をいじるだけで、もうバッティングセンターのマシーンのようだ。


「いたっ!い……いった……いたたっ!ミ、ミオ!意外と痛いっ」


 ペシン――ペシンペシンペシン!


 おー、当たってる当たってる。

 感覚が完全に豆鉄砲だけど、当たるには当たるな。


 しかし……痛がるその仕草が、もう女子なんだよトレイダ。

 片足上げて内股よ?ひじも内に入って、手首は外。


 いや――女子じゃん!?


「ははははっ!ほらけないと倒せないぞー!」


 あれぇ?なんだか楽しくなってきた。

 訓練とは言え、俺たち本当は……ある人物を待ってるはずなんだけどな。


「このぉ……!ミオの意地悪っ!」


「ははは……」


 ビュン――!


「うおっ――!こらトレイダっ!狙いは的だろっ!!」


 トレイダの奴、俺を狙ってきやがった。

 走りながら、矢をつがえこちらを狙う。

 ちょっと待とうか、このままではガチで当たるんだが。


「……ミオの馬鹿ぁぁぁ!」


「――馬鹿はないだろっ!誰の訓練だと思ってんだよ!」


「――僕だよっ!!」


 分かってるじゃないか。なら的を狙ってくれ、頼むから。

 もしくは待ち人、キルネイリア・ヴィタール――イリア……早く来てくれよ。

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