4-61【一緒に訓練を2】



◇一緒に訓練を2◇


「「はぁ……はぁ……」」


 二人きりの訓練場でお互いに肩で息をして、俺とトレイダはへとへとになっていた。


 思ったよりも疲れたな……それに、ミーティアは意外としつこいという事が分かった。いやまぁ、俺もなんだけどさ。

 そこはお互い様という事で、言いっこなしだ。


「つ、疲れた……結局、的には一本も放てなかったよ、あはは」


「そーだな。俺にはメチャクチャ飛んできたけど……」


「それは!ミオが意地悪するからだよっ」


 いやそこまでじゃないだろ。

 俺は地面に大の字に寝転がり、トレイダは壁に寄りかかって休憩をしていたのだが……そこに――待ち人来たる。


「――ず、随分ずいぶんと仲がおよろしいのですね……お二人は」


「お?」

「え?」


 来たか。

 俺はガバリと起きて、待っていましたと言わんばかりに告げる。


「よっ!っと……イリアを待ってたんだよ!だから、この惨状はイリアのせいだなっ」


 ニカッと笑って、見上げる様に……って。


「――あれ、メイド服?」


 イリアは、動ける服ではなく……メイド服を着ていた。

 俺は事前にロッド先輩の日程を調べて、今日はフリーだったはずなんだがな。

 もしかして確認ミスか?社会人としてやってはいけないな。


「すみません……直前になって坊ちゃんに止められてしまいまして……仕事を終えてから、直接訓練場に来ました」


 その言葉は、ズシッと重みのある言葉だった。

 悲しそうで、でも……予想はしてたんだろうな、きっと。


 そんなイリアに、トレイダが心配そうに言う。


「……いいんですか?」


「仕方ありません、仕事は仕事ですから……それよりも、本当に私も参加してよろしいのですか?」


 今度はイリアが心配そうに俺とトレイダに言う。

 もしかして、さっきのやり取り見てました?

 変に勘繰かんぐられてないだろうな……不安だ。


勿論もちろんさ……な?」


「――うん。二人の訓練に、僕も混ぜてもらう形でも……いいかな?」


 イリアの言葉に、俺はトレイダを見て言う。

 トレイダも、疲れを見せない笑顔で答えた。


「私としては、お二人に協力して貰うのはありがたいのですが……ですが、本当によろしいのですか?」


 心配性だな……あ。いや、当然なんだきっと、立場的に。

 そんなイリアに、俺より先にトレイダが。


「――大丈夫だよっ!同じ一年、同じクラスなんだからっ……訓練くらいするさっ」


 いい子だ。

 マジで心が広いし、尊敬するよ……ミーティア。


「……ありがとうございます。よろしくお願いします、トレイダ・スタイニー」


「うんっ!よろしく、キルネイリアさん……あ。僕もミオみたいに、イリアと呼ばせてもらっていいかな?」


「はいっ、トレイダ」


 よしよし……良い感じじゃないか。

 これであとは、このジリジリするような視線・・・・・・・・・・・が無くなればいいんだけどな。


「……」

(見られてるんだよなぁ……それも結構な敵意だ。ロッド先輩か?)


「――ミオ?」


 実はさっきから感じてるこの視線、イリアが来たタイミングと同じくらいからだな……なんで急にこんな、露骨ろこつに感じるようになったんだ?


「ミオってばぁ!」


「――あ。あ~すまん!なに?」


「もうっ!ほら、訓練しようよ。今度は僕が投石するから、ミオの魔法でそれらしくしてね?イリアはミオと一緒に、けて見て」


「……はい!」


 トレイダの言葉に、俺は気がかりがあるもそれをスルーすることにした。

 下手に刺激しない方がいいとも思ったからな。


「了解――って、俺また魔法使うの……?」


 「当然!!」と笑顔で言うトレイダ。

 しかしスルーを決め込むも、俺は全然集中できなく。

 延々と刺してくる視線のせいで、先ほどは弾丸のように数値をいじった石だったが、今度は……まるで泥団子のようだった。


 これも、全部この視線が悪い……絶対そうだ。そうに決まってる。

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