4-37【クルセイダー2】



◇クルセイダー2◇


 試験結果によって五つに分けられたクラス。

 俺は日本人的な考えというかさ、少し卑屈ひくつな考えで……成績順で分けられていたと思っていたのだが、結果は向き不向きと言うものだった。


 総合クラスがA、対魔物クラスがB、対犯罪者クラスがC、対軍人クラスがD、そして支援クラスがEだ。


 俺が組み込まれたのは……B組だ。

 対魔物戦闘のクラスだ……これさ、試験の結果で振り分けられたんだよな?


 総合クラスが十三人。

 対魔物クラスが二十人。

 対犯罪者クラスが二十三人。

 対軍人クラスが十八人。

 そして支援クラスが三十五人。


 さっきも言ったが、クラス対抗とかあったらひどいことになりそうだ。

 総合クラスが少ないのは、やっぱり総合的なレベルの人材は少ないという事なのだろうか。


「……あーでもそうか、あれは魔物を想定してたのか」


 思い出すのは、試験の内容だ。

 言われてみれば、試験官の動きが不自然だったんだよ。

 俺は【カラドボルグ】の力を抑えるのに精一杯でさ、試験をしてくれていた試験官まで注意を持てなかったから、その時には気付けなかった。


 だけど、そうか。

 あの時の試験官……俺の戦い方、立ち回り、練度……それらを色々見て、クラスを決めたって事なのか。


 そうなると……もし、【無限むげん】による魔法を重視して試験を受けていたら、今頃E組……支援クラスだったんだろうな。

 一撃に重きを置いた【カラドボルグ】だったから、魔物と戦うのにいいとされたんだろうな。


「なるほどなぁ……あ、そう言えばトレイダは?支援じゃないんだな」


「え、ああ……まぁね、やって見たい事もあるからさ。弓での援護は任せてよっ……ジルリ――じゃなくて、家庭教師に習った弓は、中々だと思うよ?」


「あはは……」


 やっぱりそうか。

 ジルさんがミーティアの師匠って訳ね。


 俺は、もう一度羊皮紙ようひしを確認する。

 あの男の名前を、見たからだ。


「……あいつもBか……」


 あいつ……そう、あいつだ。

 ユキナリ・フドウ。


 どう考えても、どう見ても転生者。

 堂々と日本人の名を名乗る、何を考えているのか分からない奴だ。

 あの男も対魔物……B組だった。


 【グリフォンネイル】とか言う技を使ってたし、魔物相手がいいって事なのか?

 油断は出来ないな……あいつがどう出てくるか分からんが、クラウ姉さんも言ってた通り、油断だけは駄目だめだ。


「……他にも、将来有望そうな人は沢山いるね。僕も気になるけど……やっぱり」


 トレイダに変身しているミーティアは、その美少年たる顔を左右に動かして、周りを確認する。


 そして俺に言う。


「やっぱり、注目されてるのはクラウ――クラウお姉さんだね」


 そうだな……他の生徒たち、同級生の奴らの視線はクラウ姉さんだ。

 首席であり、全試験満点。

 注目も浴びるはずだよ……まぁ、本人は視線なんて完全無視の最中だけどさ。


 そんなクラウ姉さんは、トコトコと俺の所まで来て。


「――ミオ。クラスは違うけど、頑張りなさいよ?」


「分かってるよ、クラウ姉さんもね。総合だなんて、きっと大変だよ?」


 俺の言葉に、クラウ姉さんは無い胸を張って。


「ふふっ、誰に言ってんの?お姉ちゃんの心配よりも自分を心配なさい……?」


 はいはい、ですよね。俺も善処ぜんしょするよ。

 「弟弱い」とか言われたくねーし、「姉が可哀想かわいそう」とか言わせねーためにな。

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