4-20【また、直ぐに会えるよ1】



◇また、直ぐに会えるよ1◇


 クロスヴァーデン邸を出て、俺はミーティアと一緒に外を歩く。

 少しの距離を二人で歩いて、露店のベンチに座った。


 ふぅ……改めて見ても、やっぱり【クロスヴァーデン商会】は凄いんだな。

 一代でここまで大きな組織を作り上げたダンドルフ会長の手腕は、本物だろう。

 だけど、仕事とプライベートを完全に独立させるような仕事っぷりは……家族にはあれだよな。

 仕事にプライベートを持ち込むのも、それはそれで駄目なんだけどさ。


「少し待っててねっ」


「え――うん……」


 ミーティアが、露店に向かっていった。

 俺はその後姿を見ながら……思う。


 どこの店にも、【クロスヴァーデン商会】の……ステッカーみたいなものが貼ってあるんだよ。

 聞いた話によると、これは【魔法符】というもので、そこの店がその【魔法符】の貼ってある商会と関係がある事を示唆しさしているらしい。

 つまり、安全ですよと保障を得ているんだ。


 【クロスヴァーデン商会】からおろされた食材を使って料理を出している。

 【クロスヴァーデン商会】から品出しされているアイテムを売っている。

 それだけで、客足が変わるんだとか。

 本当に凄いし、魔法……便利だわ。


「お待たせっ――はい、これ」


「あ、ごめん……お金――」


 ミーティアが、露店から何かを買って来てくれた。

 俺が代金を払おうとしたが、ミーティアは何故なぜおどろいていた。


「……え、ミーティア?」


 なんでそこまでおどろくのよ?


「え?……あ、ああ、ごめんなさい。お金を払おうとする人なんて、初めてで」


 あ~。ミーティアがお嬢様で金を持ってるから、代金を立て替えるって発想がないのか。今までの人間関係で、きっとそういう人間はいなかったんだな。

 経済的に俺もきついが……でも、ここは男として。


「いくらだった?出すよ」


「――え!?い、いいのいいのっ、私が勝手に買ったんだし」


 そういう訳には行かない。

 せめて割り勘にしたい。

 前世じゃそういうことも……一度もした事ないし。


「う~ん……あ。じゃあこうしよう!」


 ミーティアも意外と頑固がんこだからな。

 絶対に俺から金は出させないだろ……だから、俺は考えた。


「……え?」


 俺はミーティアの手を取って、歩き出す。

 きょとんとするミーティアを尻目に、思う。


 ――さあ、露店を見て回ろうぜ!!





 俺は少し強引に、ミーティアの手を引いて歩き出した。

 店は沢山あるからな。


 何か君に……プレゼントさせてくれよ。

 今日の交渉がうまくいったのは、ミーティアが話を通してくれたからだ。

 だから、その礼もふくめてなっ。


「すっごいな……祭りみたいじゃないかっ」


「ちょ、ちょっとミオっ。どうしたの急に!」


 顔を赤らめながら、ミーティアは俺を見上げる。

 もう、俺の方が背が高いんだ。

 上目遣いが可愛いね。


「なぁミーティア。なにか、欲しいものはないか?お礼がしたいんだ、今日のさっ!」


「ええ!?い、いいよっ、そんなつもりじゃ――」


 そう言うだろうと思った。

 だから、俺にも考えがあるぞ。


「分かってるよ。でも、俺の気持ちだからさ!受け取ってくれないなら、俺はこのまま帰るねっ」


 俺はミーティアに向けてニカッと笑う。


「え、ええ!!ズルいっ!」


 はははっ。ああ、俺はズルいんだ。

 だから、いさぎよくプレゼントを受け取ればいいんだよっ!な?

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