3-63【ここに決めたっ!】



◇ここに決めたっ!◇


 俺とアイズ、そしてミーティア。

 三人で歩きながら、俺の目標である事をつらつらと話した。

 真剣に考えて、向き合って。


 ミーティアとは少しだけ距離があるような気もしたけど、分かってくれたよ。


「それじゃあ、【クロスヴァーデン商会うち】との関係は崩さないでいてくれるの?」


勿論もちろんだよ!むしろ、こっちが切られる覚悟もしたんだ……ミーティアがいてくれて、本当に良かったよ」


 そもそも、資材の残りを使わせて貰うという事を止めただけで、契約まで切られたらたまらん。

 今後は……少しずつだが、支援を減らしていってもらうつもりではあるが。


「そっか。それならいい、安心したわ……」


 ふぅ――と短く息をいて、ミーティアは笑う。

 どうやら、ミーティアの中でも一つ納得できたらしい。


「……うん。ごめん、変に考えさせたよね」


「――あ!!ここぉぉっ!」


 おっと、アイズがうるさい。


「どうしたんですか?アイズ」


「ここここ!ここここここっ!」


 アイズは空き地を指しながら興奮こうふんしている。

 俺には、にわとりにしか聞こえないが。


「ここぉぉぉ!ここにするわっ!家!!」


 そうかい。そこが気に入ったのね――って!そこは、スクルーズ家の前の家があった場所じゃないか。


「ここって……前のミオの家の場所よね?」


「ああ、だね。アイズ……ここがいいんですか?」


「ええ!ここはリスポ――じゃなくて、最適な場所よっ!」


 今、リスポーン地点って言おうとした?

 転生時にはサーバーとか言うし、本当にゲーム感覚だな、女神様よ。


 だが、そうじゃないのはもう理解してる。

 人も死ぬし、血も出れば痛い。

 性的興奮こうふんだってあるし、病気にだってなる。


 ここは――リアルだよ。


「本当にここに建てますか?」


「ええっ!そうしましょうっ!ぜひそうしましょうっ!!」


 それなら、前の家をそのまま残しておけばよかったな。

 引越しの際に、更地にしてしまったんだよな……ボロ屋だったとしても、勿体ない。


 アイズはそこら辺を見て回っている……しかし、突然。


「――えっ!!……うそでしょっ!!――な、なんでよっ!!」


「「……??」」


 アイズ?どうした急に。


「アイズ?」


「どうしたんですか?」


 アイズの顔が青い。

 どうしたってんだよ、そんなに狼狽ろうばいして。


「――!!?」


 なにか……気配?――気配だっ!!

 なんで急にっ!くそ、どうする……ミーティアもいるし。

 いや……そうじゃない、ミーティアはいいんだ。


「――ミーティア!」


「え!?あ、はいっ!!」


「すぐにクラウ姉さんとジルさんを呼んできてくれっ!」


 女神であるアイズのこの狼狽ろうばいっぷり。

 そして、この肌をぴりつかせる気配。

 絶対に、ただ事じゃないんだっ……!!

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