3-44【転生の流れ】



◇転生の流れ◇


 この流星落下のさわぎは、絶対に村でも広がっている筈だ。

 コハクには父さん母さんに伝えておいてと頼んでしまっていたし、さわぎを聞きつければ、確実にこちらに来るはずだ。

 その前に、このポンコツ女神から少しでも聞き出さねばならない。


「――どういう事だよ?クラウ姉さんは、俺よりも後に死んだのか?」


 アイズが言った「あんたより後に死んだ」……それは、先に転生していたと思っていた俺の考えをくつがえすものだ。


 クラウ姉さんは……あの日、刺されて死んだ俺よりも後の時間に死んだ。

 それなのに、どうして俺よりも早く転生しているんだ?

 転生は時間や場所にはとらわれない……可能性はあるが。それだけだと、同じ村の家に産まれた意味は?姉弟になった意味は?


「――そうよ。あたしが転生させたからね!」


 やっぱりそうか。

 ならクラウ姉さんがこいつを見たら……いや、俺と同じで姿は見てない可能性があるから……声を聞けば分かる――かな。


 なんにせよ、絶対にこのポンコツには気付くはずだ。


「なら、俺の事はどうだ?」


「もう一人がって事?」


 俺はうなずく。


「あんたが話してないなら知らないでしょ。本人同士が話さないと、基本的には転生者には気付けないのよ?女神は別だけど……それでも、誰がどの人間でってのは判別できないわ。女神は、下界では能力が下がるしね~」


「なるほどな」


 俺はあごに指をわせて、ゆっくりと考える。


 だから、イエシアスは俺を転生者だと分かったのか。

 だけど、俺が何処どこのどいつだったかは知る事が出来なかったと……ん?

 じゃあ、このポンコツ女神はなんで俺を一瞬で判別したんだ?


「――で、お前はなんで俺を判別できたんだよ?」


「なんでって……そりゃあ、あたしの村に無理矢理転生させたし、情報も改竄かいざんして、あたしだけが見れるように残してたからだけど?」


「――ぶっ!」


 吹いた。こいつ、サラッととんでもない事言い出したけど。


「まぁそこは・・・バレなかったんだけどねぇ。やっぱり、転生特典ギフトが空だとバレるわよね~」


 転生特典ギフトが……空?


「……えっと、それだとどうなるんだ?」


「――新しい転生者が産まれなくなるわね。だって、与えられる特典とくてんないんだもん、テヘッ!」


 テヘペロじゃねぇだろ!!

 お前がやったって事だよなぁ!


「お前……やらかしてんじゃねぇか」


 俺はあきれて、頭をかかえたくなった。


「なによー。だからこうして主神様の命令を受けて来たんじゃない。振りだけどさ」


「……っ」


 頭痛い。つまりなんだ、転生者に与える贈り物が無くなってしまって、新しい転生者が産まれなくなったって事だよな?

 それをこいつがやっちまった。

 それは、このポンコツ女神が自分が担当した転生者に、転生特典ギフトを全部与えたって事だよな。


 あっ――!!……それってまさか、イエシアスが言ってた“チート能力全持ち”って奴か!?


「お、お前……」


 ドン引きだよ……このポンコツ女神が転生させた二人。

 もう、俺かクラウ姉さんだけじゃねぇかよ。

 その事実を、俺は知ることになる……出来れば知りたくなかった。

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