3-4【村の様変わり】



◇村の様変わり◇


 学校に向かう俺とアイシアは、村を見て歩く。


「変わったよねぇ、村」


「だよなぁ……頑張ったもん」


 俺が――いや、俺とクラウ姉さんが……かな。

 二年と言う時間の中で、俺はクラウ姉さんを連れて【ステラダ】に何度かおもむいたよ。


 馬車で二日かかる距離きょりだから、やっぱ大変だけどさ。

 それでもそうする意味も価値もあった。

 クラウ姉さんは、案の定大興奮だいこうふんしたんだ。

 水洗のトイレに……シャワーに。

 もう、ド田舎の村出身なのが一瞬でバレて、ちょい恥ずかしかったけど……クラウ姉さんは直ぐに気付いてくれた。


『――ミオ!ミオの魔法で……マネできるんじゃないの!?』


 もう思惑通りだよ。

 誘導に成功して、俺はそれをクラウ姉さんの発案として村に持ち帰り、二人で【ステラダ】の町を参考に考えた。と、工事と言う名の【無限むげん】作業が始まったのだ。


「あら~、おはよう坊ちゃん、アイシアちゃんもっ」


「……おはようございます」

「おはようございます、ポラサおばさん」


 アイシアにポラサおばさんと呼ばれた中年の女性は、水をむ。

 そう、川ではないこの場所から、水をんでいるのだ。


 水道……とまではいかないが、れっきとした井戸だ。

 新鮮な井戸水は、冷たく美味しい。

 勿論もちろん、俺が【無限むげん】で掘ったんだよ?

 運よく綺麗な水がいてくれたからいいものの、何も無かったら地獄だぞ?

 どうすんの?直下掘りでマグマなんかでてきたらさぁ?


「今日もお熱いわねぇ~うらやましいわ~」


 そりゃどうも。

 ポラサおばさんは、村の中央にある井戸に水みに来ているのだが、朝から結構な行列だ。


 村には、三十世帯ほどしかいない。その中でも、高齢者は多いのだ。

 若い世代は、うちのコハクが最年少だよ。

 つまり、最年少が十歳の子供数人という事だ。

 正直言って、過疎化かそかが深刻すぎるんだよ。


「……あ、ミオ!ほら、牛さんだよ?」


「ああ、散歩かな……?」


 そうだ。目の前にいるのは牛だ。

 今まで村に一頭もいなかった……家畜かちくだよ。

 数はまだ少ないが、二十代の若い夫婦が酪農らくのうを始めてくれたんだ。

 村長……父さんの依頼でな。


 きっかけは、【クロスヴァーデン商会】のダンドルフ会長さんだ。

 最初の頭数を出すから、是非ぜひとも村で酪農らくのうをやってみないか。と、持ち掛けてくれたんだよ。


 それから一年半……美味しいです。牛肉。

 クラウ姉さんは食わなかったけど。

 まだ売りにも出せないし、数が少ないから試食程度だけどな。


 それでも、滅茶苦茶美味い……だってエサはうちの野菜だぜ?

 それを食って育つんだ、美味くないと困るだろ?

 今年の夏あたりから……最初の弾を【ステラダ】に売りに出す予定なんだとよ。

 多分、試作一号だ。


 あとは、そうだな……酪農家らくのうかが出来た事で、村の敷地が広がったよ。

 まぁ広げる為、森の木を切ったのは……俺とクラウ姉さんなんだけどさ。

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