澪から始まる異世界転生譚・少年編～手違いで死んだ俺、女神に最強の能力と武器を貰うも、スタート地点がド田舎だったのでスローライフを目指す事にした～

２－１０１【覚醒4】

◇覚醒4◇

　暗い……圧倒的（あっとうてき）な暗さだ。

　これは、目を開けているのか？

　何も見えない……自分の姿すら、一ヶ所も見る事が出来ないんだ。

「――このまま殿下（でんか）のもとへ連れて行く……大人しくしていろ」

「……いるのか……そこに？」

　ジェイルの声が聞こえる。

　殿下（でんか）って言ったか……？

　それって、あのシャーロット王女の事……だよな？

　どうしてあの子が俺を？

　連れて行くって事は、コイツへ命令を出したのがその王女様って事だよな？

　ブルり――と、身体が震えた。

　何故（なぜ）だ……行きたくない……絶対に行きたくない……！

　身体が、心が……心臓が、本能でそう言ってる。

　行ってはダメだと訴（うった）えている。

「なぁ、あんた……どうしてジルさんと仲違（なかたが）いしてるんだ？……兄貴なんだろ？」

「……答える必要はない」

　そうだろうな。でも、いいだろ？

　せっかくなら教えてくれよ。

「ジルさんの倒れているのを見た時……無性に腹が立ったんだ。自分を見ているようで、大切なものを……傷つけられたような気がして」

「――お前は、ジルを女として見ているのか……？」

　馬鹿（ばぁか）、違っげぇよ。

「違うよ……あの人は、そうだな……師匠（ししょう）みたいなものさ。俺に、外の世界を見せてくれたんだ……魔物の事とか、戦いの事とか、色々教えてくれたよ」

「……だから怒ったのか。自分を顧（かえり）みず、あれだけ苦しそうにしておきながら……それだけの理由で」

　俺には、それだけなんかじゃないんだよ。

　あと、分かってんなら追いかけてくんなよ。

　心臓……死ぬほど痛かったんだぞ？

「あんたは、命令で動いてんのかもしれねぇ……それに関しては、仕方ねぇよ。仕事なんだ……だけどな、妹を傷つけて……泣かせて……それは違う。やっちゃいけないんだ……そんなことは」

　まるで、前世の俺に言っているようだった。

　喧嘩（けんか）別れをしたとしても、誕生日にはラインをくれた母親。

　それを……俺は最後の家族とのやり取りにしてしまったんだ。

　俺が死んだ後の事なんか知らないけど、多分……家族は俺の遺体を拒否するだろう。

　そうなれば、俺は無縁仏（むえんぼとけ）だ。

　そうして転生した、新しい家族は皆、とっても優しくて……前世からは考えられなかった。

　きっと、考えていなかったんだよ。

　俺にとって……家族はかけがえのない宝物だ。光なんだ。

「――お前には分かるまい……長寿である我々エルフが、どれほどの歴史の中で生きて来たかを……」

「ああ……知らないよ。俺は知らない……でも、知らなくたっていい……いいんだ。そこにいるなら、生きているならなんだっていい！！」

　家族が幸せなら、俺も幸せだ。

　掴（つか）むんだ。

　幸せ（それ）を……光に変えて。

「……な、なんだ……これは、暖（あたた）かな……光？」

　俺の心に灯（とも）っているなら、輝（かがや）いて見せろよ！

　女神がなんだ、あとで直接文句を言ってやる。

　でも、ヒント（・・・）をくれたあのポンコツ女神には感謝してる。

　世界に存在する、様々な能力……現地の人間でも、簡易（かんい）な能力に目覚める事はある。

　なら、俺たち転生者だって……新しい力を手に入れても……いいよなぁ！！

「――white（ホワイト）・arousal（アラウザル）・of（オブ）・aurora（オーロラ）！！」

　輝（かがや）け――【極光（きょっこう）】！！