2-99【覚醒2】



◇覚醒2◇


 【無限むげん】――この世界の全ての物体オブジェクトの数値を操作し、大きさや硬度こうどなど、無数の項目こうもくを選択し、自分で弄繰いじくり回せるチート能力だ。


 その数値の組み合わせは……まさしく無限むげんだ。


 俺の得意技となりつつある、地面の操作。

 今回もそれを使って、ダークエルフの騎士の動きを封じる算段だ。


「――どうだっ!!」


 すでに土の操作は終わり、ダークエルフの騎士……ジェイルって男の具足グリーブは、硬化こうかされた土でおおわれている。


 動き出そうとしたジェイルは、足に力を入れたのか気付く。


「――むっ……動けんだと?そうか……魔法か」


 動けねぇだろ!盗賊も敗残兵も、それで動きを封じたんだからな!

 これで一発ぶん殴って――


「――っ!」


 な――!?う、動いた……だと?


「いい魔法だ……並の人間や魔物では、対処も出来んだろうな」


 お、お前は動いてんじゃねぇかよっ……いったい何が起きたんだ?

 【無限むげん】で足元を完全に封じたはず。

 なのに、どうしてこいつは動けるんだよっ!!


 ジェイルって男が立っていた場所を見ると、俺が操作した土が、足の形のまま残っていた。

 だから、壊された訳じゃない。


「――くそっ!まだだっ」


 俺はもう一度、土を操作して動きを封じる。

 しかし、ジェイルは動じることなく前進してくる。

 一度も止まることなく……だ。


「……な、なんでっ……!」


 ツゥ――っと、【無限むげん】を打破され、あせり散らかす俺がほほから汗を伝わせた瞬間。

 倒れていた瀕死ひんしのジルさんが、かすかに言葉をはっした。


「――影だ……ミ、オ……」


「――ジ、ジルさん!?……か、影?」


 そうか、影……こいつの魔法なのか!!

 ジルさんに種明かしをされても、ジェイルは動じることなく俺を目指して歩んでくる。


「ジル。まだ元気だとはな……話せないくらいに、もう少し痛めつければよかったか」


 こいつ!本当にジルさんの兄貴なのかよ!

 どうして家族にそこまでできるんだっ!!


「――お前ぇっっ!!」


 俺は怒りに任せて【無限むげん】を発動させる。


 今度はジェイルの足元じゃない……公園の遊具だ。

 この公園で遊ぶ子供たちには悪い事をするが、少しだけ変形させてもらうぜっ!


「……むっ」


 俺が数値をいじるのは、シーソーのようなものだった。

 木で出来ているのか、結構なパーツ数で構成されており、いじれる数値も沢山あった。

 その中で、軟度なんどの数値をほぼゼロまで下げてやり、更にはほそさを最小にまでしてやった。

 そうすることで、木はむちのようにしなり、長さや距離の数値を変えてやると、ジェイル目掛けて飛び出した。


 ギャギャギャギャギャ――!!


 影が発生していない所からの攻撃なら!

 そう思ったのだが……


「面白い魔法だな……だが、見え見えだよ」


 見えてても当たりゃあいいんだよっ!!

 クイッ――と、指で操作して、極細の木のむちは不規則に動き、ジェイルの腕に絡みついた。


「――どうだっ!」


「むっ……硬い、だと?」


 そうだよ。絡みついた一瞬で、硬度こうどの数値を一気に上げてやったんだ。

 さっきの地面とは比じゃないくらいになっ!


「ふんっ。いいだろう……」


 なにがだよ……お前は黙って固定されてろ!


「――お前を敵と認めてやる。任務はあるが……生きていればそれでいいだろう……」


 なんなんだよだから!その任務って!

 俺がいったい何をしたってんだ!頼むから説明求むっっ!!

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