2-78【商業の街ステラダ】



◇商業の街ステラダ◇


 馬は気持ちがいいな!!風を切ってなびたてがみが、炎のように揺れて、心地がいい。

 それと同じく、銀色のポニーテールが俺の頭にバッシバシ当たる。

 いきおいがあるから、地味に痛い。


 だが、気分は最高だ。

 【豊穣の村アイズレーン】を旅立って二日目。

 何度かあった魔物との戦いも、危なげなくこなして進む馬上の旅。


「――もう直ぐだっ!ミオっ、見えるか!?」


「――は、はいっ!あれが、そうですか?」


 か、風がすげぇ……でも……見えた。

 あれが……【ステラダ】か。


「そうだ。あれが、【商業の街ステラダ】だ。【リードンセルク王国】の最南端に位置し、四方の国からの物流が盛んな、商業の街だよ」


「あ。門がある……」


「――ぷふっ!あっはっはっは!!一言目がそれか!まったく大物だなミオは!」


 馬上で豪快に笑うジルさん……あれ?俺、おかしいこと言ったか?

 だって門だぞ?村にはないんだって!


 しかも物凄くデカい門だ。

 あれだな、異世界物の作品でよく見る、城壁に囲まれた街。

 ファンタジーの代表格、ヨーロッパなんかでよく見る……城壁都市だ。


 ――ん?……おう、そうだったな……ここ、異世界だったわ。


「――止まれ!!――と、ランドグリーズさまでしたか……!お疲れ様です!!」


 も、門番だぁぁ!

 ――って、いちいちおどろいてらんねぇよ、自重じちょうしろ俺。


「ご苦労だ、ダンガ……通してくれるかい?」


勿論もちろんです!!長旅お疲れ様でした!」


 兜に鎧を着込んだ……THE兵士。

 ダンガと呼ばれた門番の青年は、赤い顔でジルさんに敬礼けいれいをする。

 ジルさんも丁寧ていねいに返して、馬を進ませる。


 あ、あれ……?俺……もしかしてにらまれてない?

 どこだ……いったいどこを見られて……って!――腕だ!!


 俺はバッ――!!とジルさんから離れ、腕を解放する。

 しかし、ジルさんは。


「おいこらミオ。馬上で手を離すんじゃないっ!落ちたらどうする!しっかりつかまっていろ。ほら、腰に手を回せ!危ないからっ」


 手をつかまれて、再度腰に回させられる。


「あ、いや……でも」


「でもじゃない。危ないと言ったぞ?」


 俺は仕方なく、渋々したがうが……ああ、門番さんからの視線が痛い。

 この人あれじゃん……絶対ジルさんの事を好きじゃん。

 悲しいかな、ジルさんに届いてないパターンだこれ。


 ああすまん……俺は、人の事言えなかったわ。

 ごめんアイシア、鈍感で。





 は、反省はともかくだ……初めておとずれた隣国は、活気の一言だった。

 村だったら、祭りでもしてんのかと思わせるような大きな声は当たり前。

 これが街?みやこじゃなくて?


 そんな感じだよ。悪いね、ド田舎育ちで。

 この世界の俺の価値観は、十二年でかなり退化していたんだと。

 それを思い知らされましたとさ。


 馬から降りて、ジルさんは手綱たづなくくっている。

 俺は街並みを観察していたが……突如、聞き慣れた声が耳に入る。


「ミオ~~~~!」


 おっ!?このおっとりとした声……これは。


「――レイン姉さん!」


 数日振りの、愛しのお姉ちゃん……レイン姉さんとの再会だ。


「ミ~オ~~~!!――えいっ!!」

「レイン姉さん、よかっ――たぶっ!!」


 出会い頭に、豪快に抱きつかれました。

 レイン姉さんとも身長が近くなってきているので、ご丁寧ていねいにわざわざ俺を引き寄せて、胸に顔がうずまる。


「――むぐっ……うっ……!」


 柔らかけぇぇぇ!!あと、く、苦し……苦しいって!

 じゃなくて……離れてくれ!ここ街中だから!絶対、様々な方面の方に見られてるからぁぁぁぁ!!

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