2-55【目利き】



◇目利き◇


 集会所で、【スクロッサアボカド】を切る人物……クラウ姉さん。

 その通り。クラウ姉さんには、アボカドを綺麗に切って貰う為に来てもらったのだ。が……なんかミーティアさんをにらんでませんかねぇ?

 俺の知らない所で何かあった?すんげぇ怖いんですけど!


「……ミオくん。これを、食べたらいいの?」


 ミ、ミーティアさん全然動じないじゃん!

 睨まれてるの気付いてるよね?

 アイシアだったら泣く泣く逃げ帰ってしまうぞ。


「――はい。新しい野菜が……あ、いや果物くだもの、だよね?」


 俺はクラウ姉さんに確かめる。

 するとクラウ姉さんは、ナイフをくるくる回しがら。


「そう、アボカドは果物くだもの。野菜と思われがちだけどね」


 そうらしいよ。正直に言えば、俺も野菜だと思ってたし、少し前にアイシアも野菜って言ってたからな。同じく間違えてたね。


 まぁ木に生えるんだし、冷静に考えれば簡単だったな。

 いやでも、イチゴとかは分類的には野菜なんだぞ?ややこしくない?


「うちの農園で、今後収穫する予定のものです。ミーティアさんに試食してもらいたくて」


「私に?……あ。うん、分かったわ」


 理由に一瞬で気付いたようだ。

 流石さすがに、自分が持ち出しただけあってするどいね。


「お二人も是非ぜひ食べてみてください……」


「ええ」

「あ。僕はいーです」


 素直に返事をするジュンさんに、寝転がったまま断るリディオルフさん。

 ああそうかよ。ならジュンさんだけでいいよ!


 クラウ姉さんが、切った切り身を木串に刺す。

 見栄みばえは微妙だが、ぐちゃぐちゃになるよりはマシだろう。

 あと、クラウ姉さんこのひとリディオルフさんに怒ってません?


 木串に刺さったアボカドの切り身を、ミーティアさんとジュンさんが口に運ぶ。


「じゃあ、いただきます……」

「いただきます」


 どうぞどうぞ。


「――なにこれ!!美味しっ」


 お、ジュンさんにはウケたな。

 ミーティアさんはどうだ?


「……これは、このまま食べるのかしら」


「え……っと」


 味よりも先に調理法か……流石さすがなんだろうな。


 俺はクラウ姉さんを見る。

 クラウ姉さんは、ナイフを拭きながら返答。


「違うわ。調理方法は様々よ……でも、何かに乗せたり、サラダにしたり、パンにはさんだり……そう言った方法がしゅ


「なるほど……」


 ミーティアさん、真剣だな。

 でもリアクション的に考えれば、ミーティアさんも初めてって事だろ……つまり、【リードンセルク王国】にもアボカドは無いって事と考えてもいいかな。


「これを私に食べさせたって事は……そう言う事でいいのよね?ミオくん」


 おっと。なんか雰囲気ふんいきが変わったな。

 なら、俺も素直に対応しようかね。


「はい、そうですよ。もし商談を行えるなら……これをご紹介したくて」


「は?ミオ、何を勝手に……パパに怒られるよ?」


 うん。知ってる。

 それでもやって見ようと思ったんだよ、黙認してくれ。


「大丈夫だよ……多分ね」


「……ミオくん。それと、えっと……クラウさん……?」


「はい?」

「ん?」


「今日の夜にでも、お二人のお父様……畑の責任者様に、会わせていただける?」


 これはどっちかなぁ……ミーティアさんの顔は真剣そのものだし、積極的だったミーティアさんの邪魔をしちゃったか?


 いや、どっちにせよ美味いには美味いんだ……どうか、いい方に転んでくれよ。

 我が家の希望……【スクロッサアボカド】!!

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