2-37【クラウVSジルリーネ1】



◇クラウVSジルリーネ1◇


 村長宅での話は、つつがなく終わった。

 意外と簡単に話は進んで、エルフの女騎士……ジルリーネ・ランドグリーズさんは一度国に帰るらしい。

 その後、馬車を用意して戻ってくるまで、この三人を保護しておくことになった……の、だが。


「――クラウ姉さん……いつまでふてくされてるのさ」


「……べっつに」


 いやいや……どう見てもふてくされてるでしょ。

 子供みたいにほほなんかふくらましちゃってさ?ハムスターかよ可愛いな。


 まぁ、でも……分からなくもないよ。

 俺とクラウ姉さんは転生者だ、クラウ姉さんが転生者だと知っているのは俺だけだし、クラウ姉さんは俺が転生者だとは知らないけどな。


 そんな俺等だが、この世界の人間に負ける事は……ないと思っていたのだ。

 何故なぜなら、女神に貰った転生特典ギフトがあるからだな。

 クラウ姉さんもきっと、簡単に勝てると思っていたに違いない。

 だから余計に、くやしいのだろう。


「クラウ姉さん……どうだった?あの女騎士さんの実力」


 俺は思い切って聞いてみることにした。正直言って興味きょうみもあるしな。

 クラウ姉さんをここまでふてくさらせた、エルフの女騎士の力をさ。


「……強かったわよ、ムカつくくらいにっ」


 そうして、クラウ姉さんは話してくれた……少し前、俺とミーティアさんが戻ってくるまでに行われた出来事を。





 私とパパは、村長宅に来ていたわ。

 パパは村長をぐことを承諾しょうだくしに、私は何故なぜ連れてこられたのかを分からないまま、こうして床に座って聞いていた。

 そう……床で――ゆ・か・で!!


「ほうほう。では、受けて貰えるのじゃな……ルドルフよ」


「はい、村長……このルドルフ・スクルーズ、誠心誠意せいしんせいい務めさせていただきます……」


 格好つけちゃってさ……さっき玄関の前でブルブルしてた人とは思えないわね。


 こう言う外面を作る所……前世での父親とそっくりで、本当に嫌になっちゃうわ。

 まぁでも、子煩悩こぼんのうなだけまだマシね。

 前世の父親はマジでひどかった……思い出したくないから言わないけれど。


「それでだ、クラウの方はどうなのだ?」


 え?はい?私……何が?

 急に視線を向けられて、私はキョトンとしていただろう。


「はい、それは……クラウに直接決めて貰おうと思い、今日連れてきた次第しだいです」


 ふうん。だから私を連れて来たって事なの?

 でも……いったいなにを?


「――よっと……で、私がどうしたんですか?……村長」


 私は床から立ち上がり、村長の方へ顔を向けた。

 って、村長……随分ずいぶんと老けたわね。

 もうおじいちゃんじゃない……確か、まだ六十代だったはずだけど……世界観的にしょうがないのかしら。


「クラウや……この村を守る警備団、大変ではないか?」


「え」


 大変って……確かに人手はないし、男たちの手応えもないけど。

 でも、そこまで大変かと言われれば、そうでもない気はするわね。


「村長……どうして急に、そのような事を言うんですか?」


 分からないわね。そもそも警備団を作ったのは二年前のあの日、盗賊が村の近くに出たからだ。

 そこで私とミオが……魔法ちからに目覚めて盗賊を退治たいじした……という事にした結果、今後はちゃんと村を守ろうぜ!となったのだ。


「男たちは、お前について行けないそうだな……?」


「そ、それは……まぁ、はい」


 正直な話、あの日集まった男たち全員……今はもういない。

 何故なぜなら……私が、訓練で全員を“のした”結果……戦いに慣れていない全員、心がポッキリと折れてしまい、その日のうちに辞めてしまったから。

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