2-17【やっぱり怒られるよね、知ってた】



◇やっぱり怒られるよね、知ってた◇


 俺たちが村に戻り、家に帰ったのは深夜も深夜だった。

 奴隷どれいだった三人を村の集会場に案内し、寝床を用意した。

 その後には食事も提供ていきょうする予定だ。

 手厚く歓迎しないとな……念の為。


 そして、クラウ姉さんは村長に報告に行き……俺は先に家に向かったのだが。

 そう、問題はここからだ。


「ミオ……」


「……」


 俺は現在、正座をさせられている。

 レギン母さんにだ。父さんがいなかった事だけが幸い……ではなく、父さんは村長に呼ばれてあっちに行っていたらしい。


 つまり、クラウ姉さん……ご愁傷様しゅうしょうさまだよ。


「ミオっ……!!」


「――ごめんなさい!!」


 くっ……十年以上いい子で通して来たのに、こんな形で反省させられるとは。

 母さんの後ろでは長女のレイン姉さんと末妹のコハクが困ったような顔をしていて、それがもう心に刺さる。

 特にレイン姉さんは、両手を合わせて「かばえなくてごめんねっ」て言ってるようだった。


 心苦しいよ、まったくさ。


「ミ~オ~!!」


「す、すみませんでした~~~~!!」


 あー、泣きたい。

 いや……もう半分泣いてるかも。





「――何故なぜ座らされているのか……分かるな?」


 私、クラウ・スクルーズは現在……村長宅で、床に座らされている。

 正座で、素足でだ。女の子にその仕打ちはないのではないだろうか。


 そして私にその仕打ちをしたのは、誰であろううちのパパだ。

 どうしてパパがここにいるのか……せないわ。


「――クラウ!!」


「分かりません!」


「なっ……わ、分からないのか!?」


 分からないわよ……私は正しい事をした。

 村の危機を救って、奴隷どれいを解放したじゃない。

 どうして怒られなければいけないの?――理不尽だわ。


「――クラウ!!」


 み、耳が……


「……ご、ごめん……なさい」


「まったく、どうしてお前はこんなにお転婆てんばになってしまったんだ……小さい時は静かで、本を読むのが好きな子だったじゃないか。魔法を覚えてからと言うもの……こんなに男勝りになって……」


 その言い方では、まるで私が不良になったみたいじゃない。

 言っておくけど、前世では正反対だったんだから。

 それこそ図書委員をやっているような、大人しい子だったのよ?


「こら、聞いているのかクラウ。いやまったく……」


「……」


 しかし私の顔を見て、助け舟を出してくれる人もいる。

 ――村長だ。


「まぁまぁルドルフよ……そこら辺で良しとしないか。クラウは他国の敗残兵にさらわれていた奴隷どれいたちを救ったのだろう?いやはや……凄い事ではないか……」


 村長はパパにそう言い、私の活躍をたたえてくれる。

 流石さすが、お髭のおじいさんは伊達だてではないわね。


 でも、あれ?そう言えば、どうしてパパが村長の家にいるの?


「ねぇパパ。どうしてパパがここにいるの?」


「……い、今言うのか?」


 あきれられたんだけど……私、変な事を言ったかしら。

 だってそうじゃない?パパが家にいると思ったから、ミオを置いて村長に報告に来たのに、ここにいるなんてズルいじゃない。

 もし家でミオが怒られてなかったら、八つ当たりしてやるから。


「ルドルフには話があってね……来てもらっていたんだよ」


「……?」


 村長から、パパに話?

 こんな夜中に……?

 どんな話があれば、この真夜中に家に呼び出すのだろうかと、私は予想できなかった。

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