2-5【警備団の姉】
◇警備団の姉◇
「――あ、クラウさん!?」
え、クラウ姉さん?
あ、ホントだ……居るわ目の前に。
でも、なんでそんな格好を?
「どうしたのさ、クラウ姉さん……その格好」
俺の言葉の意味は、クラウ姉さんの立ち姿そのものを指している。
武装しているのだ。いったいなんで?
「ついてきて」
おいおい、急すぎないか?
突然すぎて何が何だか……説明求む。
「――ほら」
グイっと俺の腕を引っ張るクラウ姉さん。
――ちょっ!
「わっ……クラウ姉さん!?何急に!」
「そ、そうですよぉ……今デート中で」
「――は?」
「「――っ」」
もうゾッ――とするからその顔やめてくれよ!!
その真顔!昔よりひでぇから!目見開かないで!!
ほらアイシアが怯えてっから。前も言ってたよ、クラウさんがお姉さんだと大変そうってさ!
え?文字が違う?お義姉さん?気のせいでしょ。
「姉さん!アイシアもいるからっ!せめて送って行かないと――って!うわっ」
ビタ止まり!!全部が急なんだってば!!
「それは確かに。仕方ないね……でもアイシア、一人で帰れるでしょ?」
あれ?言ってること違くないですか?
「え……えっと」
そりゃあ俺を見るよなアイシアは。
なんとも悲しい目で見てくれるなぁ。
「――ね、姉さん。僕が送っていくからさ……姉さんの用は何?」
クラウ姉さんは言わない。
もしかして、アイシアがいるからか?
「……分かった。
それだけ言い残して、クラウ姉さんは行ってしまった。
「ミ、ミオ~~~~!クラウさん怖いんだけど~」
知ってる。でも普段は優し……いんだよ?
疑問形?仕方ないだろ。
戦ってるの見ちまってるしなぁ。
「うぅぅぅ」
ああ、よしよし……涙目になっちゃってさ、送っていってやるからさ。
泣くなって、アイシアよ。
◇
泣きそうになるアイシアを送り届けた後、俺は猛ダッシュで詰め所に来た。
そう……詰め所だ。
この村にもとうとう、自衛をする為の警備団が出来たんだよ。
「――待ったんだけど」
開口一番にそれっすか?
急いだ弟に
「仕方ないでしょ。女の子を一人にはしておけないんだから……」
いくらこんな村とは言え、暗くなってきたら危ないかもしれない。
男として当然の判断だろ?
「まぁ、いいけど……」
クラウ姉さんは椅子に座って、一人で本を読んでいた。
俺、そこまで時間かかってないと思うけどなぁ。
「それで、いったいなんの話なの?」
俺はクラウ姉さんの正面に座ろうとしたが、クラウ姉さんが指をちょいちょいっとして、隣を指差す。
ああ、隣に座れって事ね。まぁいいけど。
「で、何?」
「今朝……盗賊
「――え!?」
と、盗賊?しかも団?結構な人数がいるって事か。
「多分……北から追われてきたんだと思う」
北って言うのは……【リードンセルク王国】だったかな。
俺も、少しは勉強をしたよ。
北国、【リードンセルク王国】は、広大な土地を誇る大きな国だ。
そしてこの村は、隣国の最東端と言う位置付けだ。
俺の住むこの国の名は【サディオーラス帝国】って言うんだってさ。
実は俺も最近知ったんだ、悪かったな。
「最近、北で大きな戦いがあったらしくてね……その残党ってところだと思うわ」
「それが、この村の近くに?」
「そ。だから……
「はい?」
えぇ……なんでそうなるんだよ。
好戦的な姉に言われるがまま、俺は反論すら出来ないのだった。
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