2-6【相手はいつも僕じゃないか!!】



◇相手はいつも僕じゃないか!!◇


 盗賊団が現れた?しかもいきなり潰しに行く?

 もうさ、クラウ姉さんは好戦的になりすぎなんだよ。


「つ、潰しに行くって……まさかこれから!?何を考えてるのさっ!また・・怒られたいの!?」


 そう、まただ。

 二年前に盗賊たちをボコしてから、クラウ姉さんになんか変な正義感が出ちまって、その度に俺が付き合わされてんだよ。

 もうさっしているだろ?この詰め所……警備団って言ってもさ、団員はクラウ姉さん以外いないんだよ。


「平気よ、ミオが黙っていればね……」


「黙ってるわけないじゃないか、僕だって怒られたくない――」


 んだよ……と、言おうとしたのだが、続きは封殺されてしまう。

 姉さんの細い指が、俺の口をふさいだのだ


「……次は口でふさぐよ?」


 口喧嘩くちげんかになると、毎回それだよまったく。

 しまいにゃ本当にして来るからたちが悪い。


 この人に禁忌きんきと言う言葉はないんですかね。

 あなたも前世は日本人なんでしょ?

 いや、待てよ……?もしかして、前世でそういうことの出来なかった喪女もじょさんだったとか?

 それなら仲間じゃないか。うん、好感が持てるな。


「――協力するよね?可愛いミオくん……?」


 ふさがれてるから拒否できねぇじゃん。

 仕方なく、俺はコクコクとうなずく。

 もうそうしないと進まないからね……この人。


「よし。じゃあ行こう」


 指を離してくれた、が。

 まさか今からとか言うと思わねぇじゃん。


「え……ちょっと待って!今!?」


 マジで好戦的だな……いったい何がクラウ姉さんをそうさせてんの?

 今からとか強行すぎだろ……準備も何もしてないぞ。


「……はいこれ」


「ねぇ、聞いてる?」


 カチャン――と、テーブルに置かれる鉄の剣。

 えらく簡単に言うと思ったよ、初めからやる気満々だったんだな、まったくさ。


「……他の人は?」


「――皆辞めたわよ、情けないわよね」


 まぁ知ってたけどさ……やっぱり、そうか……村の男衆は、誰一人クラウ姉さんについて行けなかったのね……それにしても、大の男の一人もか。


 そう、この警備団。団と言うからには初めは数人いたんだ。

 だが、クラウ姉さんが強すぎた……だれも歯が立たなかったんだよ。

 だから、クラウ姉さんの訓練の相手もいっつも俺だ。

 俺しかいないんだよ。まともに戦えるのがさ。


「皆、軟弱なんじゃく……情けない」


「それは……そうだろうけどさ、今からはちょっと……準備もあれだし」


 この村のレベルでは仕方が無いんだって。

 精々、農作業や大工でしか身体を動かさないのだ。

 剣など誰も持った事が無かったって言ってたし、戦闘訓練なんてもってのほかだろう。


 この安物の剣だって、商人から買ったもので、数は少ない。

 それに、初っ端の訓練でブチ折りかましたの誰ですかねぇ。


「平気よ。この剣はミオのだから……私はこれがあるし」


 そう言って手をかざし、発生させる光の剣【クラウソラス】。

 いや、そういう意味じゃねぇってクラウ姉さん。

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