1-71【イベントステージ4】



◇イベントステージ4◇


 ははは……もうさ、盗賊全員と目が合ったよ。

 うん、自信を持って言えるぜ……ここまでおっさんと目を合わせたの、前世でも中々ないぜ?もうバッチリと目が合って、にらみなのか何なのかも、麻痺まひって分かんねぇや。


「お、お前……何処どこのガキだぁぁ!?」


「――ミオっ!!」


「え、ミオ?」


 クラウ姉さんが叫び、ガルスが戸惑う。

 しかし、盗賊たちの視線の先が自分ではない事に気付いたガルスも振り向き。


「うわ!ミ、ミオ!」


 そんなガルスに、俺はつい素で。


「――うわっ!じゃねよこの馬鹿ばか!!バレちまっただろーが!!」


 と、本音をらす。

 俺はもう、それはもう必死にガルスのもとに駆け寄って、手首に巻かれた縄をナイフで切りにかかった。だってもうそれしかないだろ?


 一人で逃げ出すにも、もう遅いって分かるよ……流石さすがにさ。

 だから俺は、もう頼るしかないんだ、クラウ姉さんに。


「――クラウ姉さん!頼むっ!」


 頼りになるお姉さまも分かっていたのか、すでに行動を開始していた。

 物凄い速さで俺たちの前に回り込み、盗賊たちの前に立ちはだかったのだ。


「な、はやっ……」


 ほとんど見えなかったんだが……は、速すぎだろ!どうやってやったんだよ!!


「――ミオ!ガルス!!」


 うわっ……も、物凄い剣幕けんまくなんだが。


「はい!」

「は、はい!!」


 当然、俺たちは能動的に返事をしていた。

 そしてクラウ姉さんは言う。


「――今から見る事、絶対に!誰にも!……言うんじゃないわよ?もし、言ったら……」


「い、言ったら?」


 返事をしたのはガルスだ。だって俺は知ってるもん、言ったらどうなるかなんてさ。


「――ただじゃおかないわ……一生、目を閉じなくしてやる」


 怖ぇよ!!普通開けなくしてやるって言わないか!?

 それって目を開いたまま殺すって聞こえるんですけど!!


 だ、だが俺は言う、ここは約束しておこう。


「分かってる!絶対に言わないよ、クラウ姉さん!!ほら、ガルスもっ!」


「は、はい!言いません!!」


 クラウ姉さんは横目で俺たちを見たまま、にこりと微笑ほほえみ。


「――いい子ね。それじゃあ、機会を見て逃げなさい……いいわね?」


 俺とガルスは無言でうなずき、俺はガルスを立たせると……クラウ姉さんの背を見ながら二人で後退した。





「はんっ!いい度胸じゃあねぇか、この小娘……この俺たちをたばかるとはなぁ、大したもんだぜ……だがな、こりゃあただ死ぬだけじゃあ終わらねぇぞ?」


 盗賊親分はご立腹だ。

 おそらく、俺とクラウ姉さんが仲間グルだと気付いたのだろう。

 そして、人質ガルスを助ける為に演技をしておちょくっていたのだと、親分だけは理解できていたようだ。


 だって盗賊A・B・Cは、クラウ姉さんとヤレなくて――あ、やべ、言い方。

 クラウ姉さんと遊べなくてガッカリしてるもん。特に盗賊B。


「……死ぬだけじゃ終わらないのは、あなたたちだわ……」


「――何だと?」


 クラウ姉さんはそう言って、右手を前に構え。


「――顕現けんげんせよ。光の道標みちしるべ……【クラウソラス】!!」


 クラウ姉さんの言葉に反応して、空気がふるえた。

 前に出した手のひらに、小さく光り輝く何かが集まり……煌々こうこうかがやきだして、やがて収束する。

 それは形となり、天に伸びる柱のようにまっすぐと顕現けんげんされた。


 あぁ……それが、クラウ姉さんの転生特典ギフトなんだ。

 その――神々しくも光り輝く、まばゆい剣が……

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