1-21【ノーカンでいいですよね?】



◇ノーカンでいいですよね?◇


 姉に、初キッスをうばわれました。

 前世の俺でも経験した事のない、くちびるへのダイレクトアタックを、姉であるクラウお姉ちゃんにさらって行かれました。

 そして現在、俺は熱を出して寝ています。

 はい……知恵熱です。異常事態に、身体がついて行きませんでしたとさ。なっさけねぇの。


 なぁ?知ってると思うけどさ、今日は誕生日だったんだぜ?

 甘味の一つもしねぇケーキも食わねぇまま、俺は姉にキスされてぶっ倒れたんだ。

 クソ情けねぇ……泣きてぇ……六歳児にキスされてぶっ倒れたとか……黒歴史もいい所だろ。


 傷心の俺、ママンによしよしされて就寝中しゅうしんちゅう

 ママンは俺を寝せながら。


「今日は疲れちゃったもんね~、ゆっくりねんねしましょうね~」


 そう言ってくれると、多少は心が落ち着くよ……ばぶばぶばぶぅぅぅぅぅ!!

 うん。今更赤さんの真似してもむなしいだけだな。

 しかし……なんでクラウお姉ちゃんはキスなんかしたんだろうか。

 いやあれか?家族愛ってやつ。

 実際オヤジもママンも、微笑ほほえましく見て笑ってたよ。

 でもさ、舌……入れるか普通?


 あれ……なんだ?考えている内に……眠くなってきた、本当に疲れてたんかな……

 あ~ママンの声が心地いい。マジで……眠ぃ……な。





 夜中。ふと目を覚ました。

 流石さすがに寝たのが早かったのか、トイレに行きたくなったんだよ。

 と言っても、この村に下水はない。だから勿論もちろんトイレはザ・かわやって感じの川の近くだ。

 三歳になったとは言え、暗い夜道は怖い。だって子供だもの。


「……ね、レインおねぇちゃん」


 だから俺は、心優しいおっとりお姉ちゃんを起こすことにした。

 逆隣で寝てるクラウお姉ちゃんは……やっぱさっきのあれが尾を引いて、声掛けずれぇよ。


「う~ん……」


 起きてくんないんだけどっ!?

 ど、どうしよう……れそう。一応一人で行けるけど、今までは過保護かほごな家族の誰かが、必ず付いてきてくれてたんだよな……――!!……うおっ!!


「……クラウおねぇちゃん……おきてたの?」


「うん」


 逆隣のクラウお姉ちゃんが、ばっっっちり目を見開いて、俺を見てました。

 ガン見だよ。こ、怖ぇぇぇぇぇ!!


 わおっ!起き上がった!?……え?何?無言でこっち来ないで!!


「ミオ」


「……な、なぁに?」


 まさか……また?いやいや、流石さすがにないだろ。

 あれは誕プレだ、ノーカンだ!!そうだ、そうだよ!ノーカンじゃん。家族なんだから!


 そうだよ、俺は何を気にしてるんだ!そうだそうだ、誕プレでキスしてくれるだなんて、いいお姉ちゃんじゃないか!!ち、違うぞ、決して怖いんじゃない!!


「――ミオ」


「は、はいっ」


 やべ、反応して挙手きょしゅしてしまった。

 ねぇ……俺、この後どうなんだろうね……不安しかない。

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