1-19【お姉ちゃんからはなんでしょう?】



◇お姉ちゃんからはなんでしょう?◇


 オヤジとママンから積木つみきを誕プレで頂いた俺は、それを手に取って色々してみる。

 う、うん。実にむなしいんだが。

 心がすでに成人してしまってる以上、楽しめる訳がないんだよな。


 ――って、痛てぇ!!

 おいルドルフ……ちゃんとけずっておけよ……木が刺さっただろうが!!

 声には出さない様にして、俺はオヤジをにらむ。


「お?ははは、喜んでくれたみたいだな~」


 ちげ~よ。にらんでんだよこれでも!!

 まだそこまで上手く表情筋が動かせねぇの!!

 それでも目つきだけはにらんでるつもりなんだが!?


「うふふ……よかったわねあなた。二人でけずった甲斐かいがあったわ」


 ……。うん。そうか……ママンもやってくれたのか。

 涙ながらに本当に嬉しそうにするレギンに、流石さすがの俺も何も言えん。


「あ……ありが……と」


 我ながら、実に苦々にがにがしい作り笑いだったと思う。

 それでも、親を(特にママン)困らせてはいけない。

 自意識のうすい赤子ならともかく、今後の俺はいい子になるんだからな。

 将来への布石ふせき作りは、もう始まっているのだ。


「いい子ねミオは……あ、そうそう、お姉ちゃんたちからもプレゼントがあるのよ?きっとミオも喜ぶわっ」


 ほぅほぅ、しかしママンよ、娘たちへのハードルめちゃめちゃ上げるじゃん。

 ほら見ろ。レインの顔引きつってるぞ?クラウは……うん。変わってないな。


「そ、そうだね。次はお姉ちゃんだよミオ!」


 流石さすが長女のレインお姉ちゃんだ。

 ポンと手を叩いて、空気をえようと必死だったけど、そこは見逃そうじゃないか。


「……えっとね。レインお姉ちゃんからは……」


 レインお姉ちゃんは、椅子の背凭せもたれに置いてあった小さな箱を手に取って、俺の目の前に持って行って、よく見える様に開けてくれた。

 そうだよ、こうやって見せる様に開けるんだ。分かったかなルドルフ君。


 レインお姉ちゃんが開けた小さな箱の中には、さらに小さな何かが入っていた。


「なぁに?」


「う、うん。これはね……」


「おお!貝殻だなっ!」


「……」


 おいルドルフ……娘の出番をうばうんじゃないよ。

 ほらぁぁぁ!泣きそうじゃん!涙浮かべちゃってんじゃん!どうすんだよっ!?


「あ、あなた……」


 おっと、レギンは流石さすがに空気の読めるママンだ。

 ルドルフの耳を引っ張ってだまらせてくれた。よし、さぁレインお姉ちゃん、仕切り直しだ頑張れっ。そのめちゃんこ綺麗な貝殻のご紹介をしてくれ!!

 もう俺は何でも嬉しいから!その気持ちだけで充分だから!!


「こ、これ……【キールの貝殻】……すっごく探したの。やっと一つ見つけられて」


 【キールの貝殻】って確か、レインお姉ちゃんがずっと欲しいって言ってた虹色の貝殻じゃ……ま、まさか……俺の為に?

 いい子じゃ……俺のお姉ちゃんがいい子じゃぁぁぁぁぁぁ!!

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