北海道旅行記

@mukiryokushounen

北海道上陸

朝4時に起きて支度をする。

ある程度のサイクルで生活リズムがズレていく体質から逆算してこのタイミングで早起きになるように調整をした。

リュックには衣類を計4日分入れて洗濯を最小限にする作戦だ。

他に持って行くものも時刻表とスマホとモバイルバッテリーとそのケーブル類など大したものはないのでリュックサックひとつで済む。

そも旅に出る時は荷物を一つに限定する主義だ。


今回の北海道上陸にあたって、様々なルートが考えられる。

大きく陸海空路の3つ。

陸路ならば新幹線か在来線か。

海ならフェリーだが、これも新潟と大洗の2つ。

そして空はおおよそ格安航空が成田から出ている。

当初、秋の乗り放題パスという連続3日間限定の18きっぷのようなもので北海道入りしようと思っていたが、どうしても青函区間の通過がめんどくさい。

なので新潟からフェリーで行くことを考えた。

ちょうど新潟を正午に出て小樽に翌4時過ぎに着くという便があったのでこれにするつもりであった。

料金も学割を利かせれば9千円台と、移動と宿代が含まれていると考えれば破格だ。

しかしなんと鈍行だけでは正午のフェリーに間に合わないことが発覚する。

新幹線を短区間だけ使打てを考えたがそれでも間に合わない。

流石に全区間となると高過ぎる。

新潟からは他に苫小牧便も出ているが、これは苫小牧着が16時台とあまり旨味がない。

これはどうしようかと頭を悩ませていると、研究室にいる飛行機付きの友人が飛行機はどうなのだと提案してきた。

試しに検索するとピーチアビエイションの成田ー新千歳便に6千円ほどで乗れるという。

もうこれしかないということで北海道入りの手段が決まった。


成田へは東武から京成を使っていくことにした。

15時の飛行機に乗るため14時に空港に着けば良いということで11時台のりょうもう号に乗るつもりであった。

しかしあまりにも早く支度ができてしまったために暇を持て余し、早く着いたら空港で飛行機を見ていようということで一本早い列車に乗り込んだ。

慣れ親しんだ東武200系りょうもう号が新桐生駅に入線してくる。

500系が導入されたことで順々に廃車になっているようで、後どれだけ乗れるかわからない。

移転した阿佐美駅を通過して藪塚に停車。

先日この近くのジャパンスネークセンターに行ってきた。

なかなか面白い施設だと思うが、平日なのもあって終始他に客がいなかった。

施設の人に話を聞いたがやはり苦しいらしく頭を悩ませているそうだ。

次の治良門橋で運転停車する

下りのりょうもう号との交換のためだが、手前の藪塚で交換するようなダイヤにできないのか。

そうすれば所要時間の短縮になるであろうに。

車窓の稲の穂が見事に垂れ下がっている。

刈りどきであろう。

帰る頃にはすっかり景色が変わっているかもしれない。

東北ではもう刈っているかもしれない。

そう言った地域ごとの風景の変遷を見られるのは陸路の特権であるし、飛行機で行くのが少し残念な気もする。

SUBARUに支配された街太田を過ぎ足利市駅に着く。

この駅は正直足利市というには外れ過ぎている。

北関東の東武とJRが同じような駅名の時には大体乗り換えができるような距離感にあるが、ここだけはほぼ無理な距離にある。

少し過ぎた県の駅で運転停車かと思いきや停まってすぐに発車した。

なんだったのか。

ここで無線機を忘れたことに気づく。

北海道は未だにアナログの鉄道無線が聴ける貴重な場所であるというのに痛い忘れ物だ。

館林でそこそこの人数が乗ってきた。

ここからいきなり速度と乗り心地が向上する。

羽生を通過。

秩父鉄道との接続駅なのに容赦なく通過する。

この辺りからりょうもう号は本当に滅多な駅では止まらなくなる。

ここから停まるのは久喜、東武動物公園、北千住、東京スカイツリー、そして浅草だけだ。

他の特急が停まる春日部すら通過するのだから圧巻である。

その春日部を過ぎて野田線の下をくぐるとさらに加速していく。

北千住までひたすら快速に通過していくこの爽快感を千円で味わえるのだからたまらない

そうりょうもう号の素晴らしさはその安さにある。

なんと新桐生から浅草まで乗車券込みで2千円強しかかからない。

今回成田まで行くのに京成線へ乗り換えるが、それを含めて3千円である。

実は桐生駅から成田空港までの高速バスが出ているのだが、これの料金が4千5百円。

所要時間はほとんど変わらないことを考えると高速バスに真正面から殴り合って勝ってしまう。

東武鉄道バンザイ。

草加のあたりを高架で進んでいると、眼下の住宅地の中に広い墓地があった。

不謹慎なようだがこんな地価の高そうな場所を墓地に使うのはなかなか贅沢な話だと思う。

そんなことを思っていると左手から常磐線がやってきて一緒に荒川を渡りまもなく北千住に着く。

いつも大体北千住で乗り換えてしまうので特に明るい時間にここから先に乗るのは久しぶりだ。

北千住を出ると自動音声で車窓にスカイツリーが見えるという案内が流れる。

確かに右手方向にそれが見える。

曳舟を過ぎたところから工事をしている様子が見えた。

知らなかったがどうやら曳舟からスカイツリー駅までの地上区間を高架化する工事のようだ。

正直まだしていなかったのかという驚きの方が強い。

左手にアサヒの金色のアレを見ながらゆくっくりと進んでいく。

このゆっくりと隅田川を渡るのは見るのも乗るのもなぜか好きで、浅草に来るとよく河川敷から見ている。


浅草で都営浅草線に乗り換える。

浅草線の浅草駅までは200mほど歩くがその道中で人力車を見かけた。

ご時世とはいえ人力車を引く人がマスクをつけるのはさぞ息苦しかろうと他人事のように思う。

京成に乗るのはおそらく初めて実に楽しみに思っている。

浅草を出てすぐに押上に停まり地上へ出る

左手に先ほどまで乗っていた東武線の線路が見える。

つまり押上で乗り換えれば良かったわけであるが、なんとなく浅草まで行きたかったのだ。

再び荒川を渡ると左手に古い線路が見える。

青砥から対面に停まっていた普通列車と同時に発車する。

隣の高砂で5分ほど停車。

隣の各駅停車が先に出る。

その後すぐに成田行きの快特がやってくる。

成田線と北総線との接続を取るための停車らしい。

高砂を出て成田線を跨ぎながら大きく左へカーブする。

カーブのためにかなり速度を落として新柴又の駅を通過する。

その時見えた駅電光板の通過の文字が物悲しい。

その後江戸川を越えると同時に一気に加速しトンネルに入る。

トンネルを抜けてしばらく走ると東松戸の待避線に停まる。

快特を退避させるとは何者だと思ったがそんなものスカイライナーしかない。

出発信号が変更予告で点滅するあたりが私鉄らしい。

運転席を覗くと掛金不良後日修理予定というシールが貼ってある。

どれのことだろう。

新鎌ヶ谷を出た次の西白井に差し掛かったところから線路の両脇に明らかに過剰なほどの線路用地と思しき草ぼうぼうの空き地が広がっている。

所々その空き地にソーラーパネルが設置されているのが見える。

こう言った使い方をこそもっとして欲しい。

印旛日本医大行きという列車をよく見るが、まさか引き上げ線があるだけの棒線駅だとは思わなかった。

ここから京成名物の高速進行用の縦に長い信号が出てくる。

駅を出て少し左へ曲がると新幹線かと思うほどの高規格な線路がやってくる。

左手に蓮の葉がたくさん浮いた沼を見ると正面に着陸態勢の飛行機が見えた。

やがて成田湯川に停まるといよいよ次が成田空港第2ターミナルだ。

成田湯川の駅は真ん中に通過線を持った対面の駅で完全に新幹線駅である。

通過線がない田舎の駅よりよほどらしい。

というか成田新幹線計画の跡地を使っているのだから当然といえば当然であった。

しばらく停まっていると対向のスカイライナーが通過して行きすぐに出発進行となった。

なぜかと思ったらなんとここから単線になるのであった。

単線になるポイントは高速用のものでそういえば開業当時の記事で見た覚えがあった。

やがて左手に狭軌のJR線が合流してきて単線が並んだ形になった。

突然単線になるのも納得である。

程なくしてトンネルに入り成田空港第2ビル駅に着いた。

ホームにはホームドアがあり、スカイライナーのドア位置だけ大きく開くようになっている。


コンコースに出ると目の前に日本一短い鉄道芝山鉄道という看板があり心惹かれるものがあったがおとなしくターミナルへ行くことにする。

ここで大きなミスをした。

件の飛行機付きの友人にピーチは第3ターミナルという話を聞いてそれ以上何も調べずにいたが、前年の秋に第1ターミナルへ移っていた。

それを知らずに第3ターミナルまで一度行ってしまい焦ったが、気まぐれに早くきたのが功を奏し余裕で間に合った。

ピーチは地上タラップを使うようで飛行機までバスで向かった。

そう言ったところもまた安さの所以なのだろう。

ただ巨大な飛行機の脇を通るのもなかなか面白い。

私の座席のちょうど真下が荷物室の入り口のようで、ガコンガコンと音が聞こえる。

乗務員から非常時の案内がされ、まもなくプッシュバックが始まる。

数分そのまま停まっていたがじきに誘導路へ進み始めた。

飛行機はこのしばしば待たされる時間があるのが煩わしい。

しかし離陸時のあの加速感は何者にも変え難いものがある。

ちょうど翼のすぐ後ろの席であったので、フラップやエアブレーキの動作確認の様子が見られた。

滑走路の端までやってきていよいよ離陸だ。

身体がシートに押し付けられ誘導路をゆっくりと進んだ距離を一気に走り去り一瞬で建物が小さくなってゆく。

ほぼ真っ直ぐ上昇していき外房の海が眼下に見えたところで一気に180度右旋回した。

この日は実によく晴れていたので地上の景色がよく見え、千葉の河口付近の川の形がテスラバルブみたいだと思った。

乱気流でそこそこ揺れるなと思いながら持ってきたお茶のペットボトルを開けるとプシュッと音がした。

確かに気圧が下がっているのだと実感した。

こうして直に空から見ると、地理で習った川と氾濫原と河岸段丘の様子がよくわかる。

川の周りに田んぼが敷き詰められているのが畳のように見える。

私が思っていたよりも飛行機ははるかに速く、あれは茨城空港かと思っていたのがどうやら福島空港であったのをフライトマップを見て初めて知った。

それと同時に海の方におそらく福島第1原発とおもわれるしせつがと思われる施設が小さく見えた。

何か線路が見えないかと探すが、道路と区別がつかない。

かろうじてやたらまっすぐ敷かれている新幹線だけは判別がついた。

あっという間に仙台平野が見えてきた。

仙台なら高空からでもどこがどこだかわかるかと思ったら全くわからなかった。

盛岡あたりからモヤが出てきて地上の様子が判然としなくなってきた。

こうなると飛行機は途端につまらなくなる。

そう思っていると彩雲がちらほらと出てきたのがせめてもの慰めである。

岩手と青森の県境付近で高層雲の中に突っ込みいよいよ何も見えなくなった。

陸奥湾上空で雲が晴れてまた景色が見てるようになった。

相変わらず新幹線と原発施設だけは判別がつく。

この辺りから高度が下がり始めると同時に右旋回を始めた函館の東を掠めるとそのまま千歳まで海上を進んでいく。

右側の座席に座っているためにもう海しか見えない。

そうこうしているともう着陸態勢に入ったようで、リクライニングを起こすように注意された。

飛行機に乗り慣れていないのがバレバレである。

ふと足元に目をやると、飲み干したペットボトルがベコベコに運んでいた。

この高度でこの有様では地上に着いた時にどうなっているか楽しみである。

ずっと右を向いていて首が痛くなってきた。

列車ではこうはならないのだが。

おそらく窓が小さいために本当に真横を向かなければならないからだろう。

陸地が見えてくると左旋回をしてフラップが開かれた。

低空で思いのほか揺れるのでそこそこ怖い。

おそらく追分の合流地点と思われる線路が見える。

明らかに本州とは異なる地上の風景を見ながらいよいよ着陸する。

なかなかお上手なランディングの後強烈なブレーキを感じ、無事に着陸した。

乗務員の最後の挨拶でほんまおおきにとの言葉があったので、本社が大阪なのかと思い電波が使えるようになったスマホで早速調べると関空が拠点とあり納得した。


さて、老人並みの早寝早起き生活をしている身としてはさっさと札幌のホテルに行って寝たいところだが、謎にチェックインが20時以降の予約をしてしまったためにこのままでは時間が開きすぎる。(空港着が16時半)

そのためどうせ時間を潰すならと18時過ぎまで空港の展望ロビーで飛行機を眺めていた。

快速エアポートに乗り札幌へ向かう。

やはり転換クロスは良い。

東京は流石に厳しいにしても、仙台あたりは導入すればいいのにと思う。

それとも東日本は転換クロスが嫌いなのか。

飛行機から列車に乗り換えると、やはり自分は鉄道が性に合っていることがはっきりとわかった。

鉄道の安心感に浸りながらこの日の宿へと向かった。

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