第15話 東公先生 意趣返しを語る

東公先生街を散歩したるに突如として雷鳴大轟す。

街の人口々に大雨降るべし、家に帰るべしと叫ぶ。

東公先生止むを得ずして雨宿りす。間もなくして雨強くなりて止まず。

東公先生傘持たず。また銭持たずにして散歩したるが故に傘買えず。ゆえに帰れず。かたわら見れば傘有り。その家の物なり。


東公先生家人を呼びていわく。

暫し傘を借用したしと。


家人いわく。

汝、傘の質となるもの持つかと。


東公先生答えいわく。

我何も持たず。我が姿見ればわかろうと。


家人嘲笑していわく。

何も持たずば濡れるとて困る理無し。疾く去れと。


東公先生大雨に打たれて悄然として帰る。


二年経てその家人、東公先生の高名を聞きて、物事の正誤を尋ねんとして東公先生のもとを訪れたり。


東公先生いわく。

心持たずば過つとて羞ずる理無し。疾く去れと。



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