第14話 東公先生 壺を語る

ある人、市にて古き壺を買う。

その形細長くして首さらに細まる。ゆえに花をさすによしと。

その人、家に持ち帰りて用いんとせるに壺中より硬き物の当たるが如き音のするに気づきたり。

逆さにして異物出さんとすれど壺の首細くして出ず。

ある家中の者あるいは日を当てて中を覗くべしと言うも壺細きが故に底まで見えず。

またある者長き箸差し込んで取り出すべしと言うも硬きものに触れるとも取り出すことあたわず。


その人困りて東公先生の元に参じて良き考えを乞う。

東公先生壺を逆さにして振る。硬き物の音す。

その後逆さにした壺の下に敷きし紙をじっと見る。

而して壺に少しの水を入れていわく。

しばし待てと。


ふた時後、東公先生さらに水を足し壺を振る。音せず。

東公先生壺に棒を刺しよくかき混ぜ庭にて壺を逆さにす。

泥が如きもの出たり。


東公先生いわく。

是先主の花差しに用いたる時、花につきし土また枯葉壺に落ち溜まりてやがて塊となれる。やがて先主のもとを離れまさに水を失い硬きものとなりたるが如し。


その人問う。

東公先生何故それに気付くかと。


東公先生いわく。

東公汝と同じものを見る。

ただ東公は硬きものの壺に入りたる理を考う。

これにより気付くと。

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