第9話 東公先生 手紙を語る

東公先生、遠方の友より手紙を受け取ていわく。

嬉し、嬉し、と。


ある人聞く。

内の文を読むことなくして嬉しとは何故なるかと。


東公先生答えていわく。

友の手紙なり。ならば我が友いまだ命あるなり。これを嬉しとす。

また友東公を忘れずして手紙を送り来たる。これも嬉しとすと。


ある人また聞く。

されど、その者、東公先生に金の無心をせんがために手紙を送り来たるやもしれず。

それでも嬉しとするかと。


東公先生これに答えていわく。

そもれもまた嬉し。なんとなれば、東公もし金に窮するに、その友に手紙送りて無心するは無為なるを予め知れるがゆえにと。

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