くらやみ祭りで逢いましょう

碧月 葉

第1話 私、騙されました?

「ええ〜っ! 心春こはる、それ絶対騙されてるやつだよ」

 大学のラウンジホールにかおるの声が響く。

 

「それで、相手は何やってる人?」

「…… 医学生」

「ゲホッ」

 めいは、飲んでいた抹茶ラテを詰まらせた後、ため息をつくと憐れんだ目でこちらを見てきた。


(わぁぁぁ。どんどん自信なくなってきた)


 私は、友人に恋の悩みを相談していた。


 ネットで知り合った男性、柏城かしわぎさとしと付き合って一年。

 

 受験生時代は、東京で智さんと一緒に過ごす事を考え、モチベーションを上げていた。

 東京の大学に進学した私は、これで会えると喜んだ。

 しかし、ひと月経っても一向に会うことができない。

 さすがに心配になって、大学で友人になった2人に意見を聞いてみたのだった。

 

 女子高出身の上、妹しかいない私は、男性の事を良く分かっていないかも……とは思っていたけれど。


 え、騙されてる?


「一年間付き合って、一度も会ったことないんでしょう? いくら受験生と医学生といってもあり得ない。東京に来ても会えないなんて、どう考えてもおかしいでしょ。それ絶対医学生じゃないよ。気持ち悪いおっさんとかだよ」

「そんなぁ。ものすごく誠実で、温かい言葉を掛けてくれたんだよ」

「馬鹿だねぇ。上手く引っかけられてるの。相手の思うつぼよ。写真とか送ってないよね」

「え、送ったけど……」

「まさか、裸⁉」

「ないないないない。そんなことする訳ないよ。健全な自己紹介! 智さんもお返しに写真送ってくれたよ。ほら」

 送られていた画像を2人に見せてみる。

 少し表情は硬いけれど、それも真面目な智さんらしいと思う写真だ。


「うっそ。ヤバっ、カッコいい。少し濃いめだけれど美形じゃん。……心春、ご愁傷さま。こりゃあ完璧に詐欺だわ」

「間違いないね。自分とは似ても似つかないイケメンの画像と、学歴、甘い言葉で田舎の女子高生釣って、遊んでただけだね。ああ……可哀そうに」

「違うよ! 写真交換したのも、随分経ってからだし、医学生って知ったのも割と最近だよ。私が進路に悩んでる時も、部活の人間関係で困った時も親身になって相談してくれたし……」


 友人2人は、残念なものを見るように、私を見つめる。


 ううっ、神様。

 乙女の純情を捧げた一年間は無駄だったのでしょうか?


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