居候高校生、主夫になる。〜娘3人は最強番長でした〜
@ARN3
第1話
「すまん颯太。高校、やめてくれ」
家に帰ると、玄関で土下座をしている親父から、そんな一言。唐突すぎて、そして土下座している父親の姿に驚きすぎて何と言われたかのか、一瞬理解できなかった。
「……なんて?」
「高校、やめてくれ」
高校、やめてくれ。
意味は理解できる。つまりは俺に高校を中退して中卒フリーターになれということは。だが納得なんて出来るはずがない。
「一応訊くけど……なんでだ?」
「金がない。もうお前を養っていけない」
「ストレートで非常に分かりやすい理由だけども!」
俺が幼い頃に母親が病気で亡くなってから、男手一つでここまで育ててきてくれた事は感謝してるが、それだけでは受け入れられるような頼み事ではない。
我が家が貧乏であることは理解していたし、それについて文句を言うつもりは到底なかった。不自由はあったが、辛いわけではなく俺は俺なりに良い人生の最中であると思っていた。
それは親父が遊びもせず、働いてくれていたからだ。俺は高校を出て就職をして、親父に恩返しをしようと考えていた。
だからこそ高校を中退というのは、受け入れるには無理があった。
「すまない……だがほんとうにもう無理なんだ」
「事情は教えてくれないのか」
「……解雇、いや……自主退職した」
自主退職。
文字通り、自ら会社をやめることだ。だが何故?
「……会社で事故を起こした」
「マジかよ……聞いてないぞそんなの」
親父は工場で働いているのだが、作業の中で重機を扱うらしく、疲れが溜まっていて集中力が散漫していた親父は走行中に、よりにもよって職場視察に来ていた部長クラスの人に接触してしまったのだと言う。
「大怪我を負わせた、上の人間はもう怒り心頭だ。……自主退職を選ばせてくれただけ、まだ良い」
「それじゃ高校をやめろってのは……」
「あぁ……もうお前を養っていけない、と言っただろう」
親父は誤解がないようにと正すかのように、はっきりと言いきる。もうそれが覆ることが無いことを、俺は心のどこかで確信してしまう。
とうとう得たいのしれない不安感が襲ってきて、誤魔化すように首を掻いていると、親父は一枚の紙を俺に渡してきた。
そこには住所と、電話番号。それと「八月朔日」という、読み方がよく分からない漢字の並び。
「はちがつ……」
「それは『ほづみ』と読む。……これからお前が世話になる人の名字だ」
「は?」
「お前はこれから──俺の幼馴染みの女の家庭で過ごすんだ」
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