第14話 医療施設
エイジとユラの担当医はイグマン・ブレードといった。二人にはイグマンと呼んでほしいと最初会った時告げた。
初期は二人とも緊張と不安が強く、疲れていたので、抗不安剤と精神安定薬を投薬し、様子を見た。二人は一日、十六から十八時間睡眠をとっていた。それが十六日間続いた。
脳の疲労回復は十分と判断して、精神安定剤の投薬を少しずつ減らして行った。
ベッドから起きられるようになった二人は、イグマン医師の診察室に向かい、症状が悪かったユラから診察が始まった。
三十分くらいで彼女は出てきて、私用の薬が処方されたと言って、個室のベッドに向かった。
次にエイジが診察室に入ると問診時間は三十分くらいだった。色々話して彼も薬が処方された。エイジも個室のベッドに横になると、いつの間にか寝てしまった。
イグマン医師としては、まず二人がベッドから出て、自らの意思で歩き、他の入院患者と話す程度になったらばと考えていた。しかし今の彼らはまだまだだった。
イグマン医師は最初、毎日の診察で三週間ほど経つと、一日おきの診察と時々ベッドまで様子を見に来るようになった。そんな回診を加えて六十日過ぎた。
エイジは自動販売機や売店に買い物に行ける程まで回復したが・・・。
ユラはと言うと診察と回診以外はベッドから出ようとしなかった。イグマン医師はユラの投薬を強いものに変えていった。
この時で入院百日目であった。
エイジは入院して百五十日目には、診察はなくなり、回診だけになり、他の入院患者と話せる状態になっていた。
ユラはやや変えた薬が効いているのか、一人でゆっくりとジュースを飲んだり、雑誌を読んだり出来るようになっていた。しかし、人は警戒していた。
入院百八十日目に事件が起きた。ユラが怒りを表し、ルウスを誰が殺したんだと暴れたのである。その時一番にルウスを取り押さえたのが、エイジだった。
他の患者の不安、緊張をあおると言う理由で、ルウスは直ぐに個室からPICU(精神科集中治療室)に入れられた。
入院二百十日目。エイジは上下学ラン姿に学帽を被り、医師と看護士たちに見送られて、同じ姿の仲間たちの元に駆け寄っていった。彼の同志だった。真新しい真鍮製の義手を腕につけて。
彼はある時から学帽部隊に入隊したいと言う思いを、強く持つようになっていた。
ユラは変わらずPICUに入れられていた。
ルウスは自らの汚染水が切っ掛けで、亡くなったのであるにも関わらず、彼女はそれを受け入れようとしなかった。
入院二百十日目。ユラには自由が与えられていなかった。
義手を安全性の高いものにも取り替えられていた。彼女は三台の監視カメラに睨みを効かされながら、PICUの中で虚ろな目を浮かべながら、ベッドの掛け布団にくるまって、寝ていた。
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