〖鑑定〗マニアのコレクター道《俺に集めれないモノはねぇ!》
@skn-aaa
第1話 プロローグ
4歳の頃だった。俺は遠出(と言っても家から300mも離れてない場所)を1人で冒険していた。それでもその頃の俺にはとてつもない大冒険だった。その時からが俺はコレクターの道の始まりだったのかも知れない。
それは、いつも母と一緒に通る大通り。何処にでもあるような建物と建物の間にある小さな路地の奥には何があるんだろうか、と気になった。
母は昼食の準備をルンルンと初めていて玉ねぎとか言う野菜を刻んでいて俺はそれの近くにいる涙が出る事を知っていたので逃げるついでに行ってみよう。なんて思ったのを今でも覚えている。
空は明るいが路地の前に立つとそこはまるで別世界の様に薄暗くて軽く唾を飲んで躊躇った。1歩、この場所から足を踏み入れるともう帰って来れないんじゃないか、と今に思えばバカらしい感情と共に俺は好奇心を押さえられ無くなっていた。
ふと、薄暗い地面の奥の方に吸い込まれる様に目を移すとキラりと光る石を見つけた。ドキドキを押さえながら小道を進みソレを拾い上げると同時にボワッと石かと思っていた指輪の上の方に【┼:の〈?】と浮かび上がって驚きと同時にこれはなんだろう?と言う疑問が湧いて出た。
指輪に夢中で気が付かなかったが左を見ればいつもと同じ大通りが明るくこちらを照らしていた。
ガヤガヤ ガヤガヤ
ガヤガヤ ガヤガヤ
いつもと同じ慣れ親しんだ騒がしさと共に光を遮って、父から聞いた事のある巨人の様な人影がこちらに迫ってきた。
「あれー?おかしいっすね、あと探して無いのはここだけなんすけど。あっ!僕、ここら辺で指輪~って言ってもわからないか、キラキラ光る石みたいなの見なかった?」
「ば、化け物!!」
「なッ!?誰が化け物っすか!これでも巷じゃイケメン店員で名が通って…って待つっす!それ!それっすよ!!!待つっすヨ~…」
命からがら逃げ延びた俺は薄くなる声を無視して「巨人が…巨人が出た!」っと叫びながら家に駆け込んだ、俺を探していた様子の母に玄関で叱られ煮込まれていたスープから良い匂いが漂ってきていた頃、コンコンと木製のドアから音がなる。ドアを背にしていた俺はビクッとなると同時に俺を見て困った様に笑う母がドアを開ける。
「おかえりなさい、今日早かったわね。ってあら、人違いでしたすみません。」
「突然すみません、こちらにお子さんいらっしゃいますよね?」
「はい、居ますけど…うちの子何かしました?」
小太りおじさんの整った格好を見て焦った様に俺を見る母、きっと貴人だと思ったのだろう。その後ろには例の巨人が居た。
「ひっ!巨人が僕を食いにきた!」
「あっ!この子っす店長!後この俺を化け物をと呼んだ事を後悔させてやるっす!」
「すみませんでした!何があったか分かりませんがうちの子がした事を謝ります!どうか、どうかこの子だけはご容赦を…!!」
「んっ?あーいやいや、うちのバカがすみません、その子がうちの指輪を見つけてくれたって聞いて取引しに来たんです、もちろん元凶はコイツ(バカ)何で悪い様にはしません。なので奥さんが思ってる様な事にはならないですよ、ね、僕?」
店長と呼ばれたおじさんの後ろでファイティングポーズで拳を空に切っていた巨人が戸惑いを見せた。
「えっ?コレ悪いの俺っすか?」
と首を傾げる巨人は置いておいて。
「コレの事…ですか?」
「そうそう…所で君その指輪で何か不思議な事が起きなかったかい?」
"僕"に腰を落とし目線を合わせるその人には、嘘をつけない…まあそんな事しないのだがそう直感した俺は一回だけ指輪の上に何かが出てきた、と正直に伝えた。
「ふむ、一回で〖鑑定〗を習得かこれは原石、いや、宝石かも知れないぞ」
「店長、興奮すると人としてダメな顔する癖のそろそろ治した方が良いっすよ。奥さんが軽く混乱起こしてるっすよ」
「お、奥さん!今日の出会いは運命、そう運命です!来年、いや、半年後、いやいや、1ヶ月後、いやいやいや、1週間、いや、今日…はダメだな、そうだ3日後!3日後から息子さんをうちの店でお試し店員として働いて貰う事は出来ないか!勿論給料は出す、お試しだから5分の1にはなるが読み書きと計算あとは基本的な所作を覚えて貰う奥さんと何より息子さんにとっても悪い話じゃない、どうだ!どうでしょうか!!!」
息も絶え絶えに捲し立てるおじさん店長、やれやれまた始まっちゃったよ、とどこか軽い雰囲気の巨人と裏腹に母は続ける。
「その言葉が本当は願ってもないご提案です、ですが私達の大事な息子をおいそれと私だけで決める事は出来かねます、2日後までに夫と息子との話し合いでの決定を報告しに行くというのは可能でしょうか?」
「勿論!ではそういう事で、僕その指輪はプレゼントって事で君にあげるよ、物は必要にされて初めて"価値"が生まれる。物は価値を知られ"必要"とされる。では失礼します」
「ちょーと店長に気に入られたかって調子に乗るんじゃないっすよ!俺が"先輩"なんすからね!」
「…さっきは化け物って言ってごめんなさい…」
「んん…なんかこう直球に言われると照れるっすね。何かに目覚めそうっす」
「デューク、帰ったらおかず抜きな」
「な!酷いっす!しっかり約束通り指輪は見つけたっす!」
「元を辿ればデュークが管理を怠ったからですよ。あれだけ商品管理をしっかりしろと言ってきたのに…続きは帰ってからにしますか」
「そんな~」
「天引き」
「は、はやまるなっす!」
「減給」
「まさかのレイズ!?」
「お試し店員」
「なんと5分の1以下の給料っす!これまで積み上げてきた地位が!これじゃあタダ働きっきすよ!」
「タダ働きがしたかったのか」
「用事を思い出したっす!では!!!」
店長を器用に小脇に抱え僕たちから逃げる様に去っていく。すれ違いに何も知らない父が嬉しそう帰ってきて家族会議が始まり少し冷めたスープを囲むのであった。
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