甘味料

1-2

髪の間を滑る細くて骨の浮いた指を感じていました。

じっとりと肌に纏わりつく髪を時々つまんで、元ある場所になじませるようです。

彼の膝の上は、俺だけの特等席でした。

カラカラに干上がった緑も、雪に顔を埋めた茶色も、ここからこの角度でしか楽しめないことを俺は知っていました。

人間の頭は重いだろうに、文句も言わず身体の一部を任せてくれる彼に切なさを感じていました。

そして俺は、俺たちがどうにもならないことを知っていました。

世の理では俺が先に、彼が後にとなるものですが、どうにかして逆にもしくは同時にならないものかと考えていました。

置いていくより、置いて行かれる方がずっといい。

不老不死になれば、こんなことを考えなくて済むのに。

中学生のような思考に、笑みが零れました。

彼なら絶対に、こんな不老不死になんてことは考えないはずなのです。

小説をもっと読もうと思いました。

ふと、彼が「暑い?」と聞きました。

暑いと言ったら、どうしてくれるのだろう。

彼は、俺にどこまで許すのだろう。

言葉を煮詰めても煮詰めてもうまく味付けができず、結局彼の手の感触をまたなぞるのでした。

幼少の頃から口うるさく言われてきた丁寧な日本語は、肌荒れの酷い毎日に擦れて見えなくなったようでした。

彼が使う輪郭の丸い言葉が、俺はとても好きでした。

ただ、俺はきっといつまで経っても、どれだけ勉強をしても、彼に追いつくことは無いのだと思うともう全てどうでもいいと思いました。

あんたと居られればそれでいい。

そう言って、いつものように苦い顔で微笑まれるのでした。

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甘味料 @kama-boko3

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