二景

二景


月夜

バッテンの上に女の子座りする女子高校生ルノワール

ルノワールの周りで子供たちがかごめかごめを唄いながらルノワールに砂を振りかける


ルノワール 十字架は此処にある。私を眠らせないでと声がする。追いかけなければならない。走っていこう。どこまでも。


月に吠えるルノワール

驚き逃げる子供たち


バッグから絵の具を取り出して壁と自分に殴り描いていく


ルノワール 最初からだ。最初から総て合っていて間違っていた。なぜそのことに気づけないままめそめそと涙を流していた。私自身は間違っていなかった。私が間違っていたんだ。安心した。これからは力強く生きよう。月に向かってはねよう。私だ。私なんだ。はっはっはっ。


やってくる白いうさぎ


うさぎ うさぎぴょん。白い月をぴょん。赤い目がかわいいよ。だんごがほしいよ。十五夜来い。男はどこか。女はどこか。うさぎぴょん。かわいいぴょん。ぴょんぴょんぴょん。


トラックの音

急ブレーキ

衝突音

倒れるうさぎ

うさぎとルノワールの周りを人々が通っていく


シーンチェンジ


昼間

信号音

倒れているうさぎ

絵を描き続けるルノワール

通っていく人々

看板を持ったバニーガール


バニーガール 貴方の夢を叶えます。私は月からやってきました。月の裏は超能力の世界です。地球人では叶えられない夢を叶えてみます。まずはわたしの話を聴きませんか。聴いて損はさせません。誰か聴いてください。聴いて。お願い。


看板をおろすバニーガール


バニーガール 誰も聴いてくれない。


うさぎ耳を床に投げる


バニーガール 私が私でいる意味なんてないんだ。


LINE着信音

バニーガール切る

再度LINE着信音

バニーガール聴く


バニーガール なに? おかあさん。うん。うん。わかってるよ。うん。ごめん。おかあさん。ありがとう。お金? うん。ちょっと厳しい。いつもありがとう。いつか返すから。本当だよ。本当。うん。


バニーガール電話切る


バニーガール 誰か私のことを見てください。


うさぎを抱え込み抱きしめるグリフォン


グリフォン 祝福を。幸運を。せめてもの幸せを。

バニーガール 誰か私のことを見てください。誰か。



暗転

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る