泡沫のキミ

吉祥 昊

プロローグ

伊久いく、流星群見に行こう!」


1つ年上の兄は生まれる時代を間違えたんじゃないかと思うほど現代の子供っぽくなかった。

山で遊ぶことが好きで川泳ぎや木登りが得意。極度の機械音痴なためスマホが使えない。そんな人。


「夜中なのになんでそんな元気なの…。」


今日は流星群だってそういえば朝ニュースで言ってた気がする。兄が外へ行こうとはしゃぐから、眠たい目を擦りつつ、生ぬるい風に吹かれ近くの川原にやってきた。


「ここは田舎だからまだ大丈夫だけど、年々星が見えなくなっていってるんだって」


あくびを噛み殺していると兄がポツリと呟いた。その声が少し寂しげに聞こえて兄の方を見たが、暗くて表情はよく見えなかった。


「確かにここら辺も明るくなって夜遅くじゃないと星あんまり見えなくなったね」


だろと言いながら兄は満天の星空をその目に映す。流れ星まだかなー、とそわそわしている姿はまるで小学生だ。


「もし…願いが叶うなら、伊久は流れ星になんてお願いする?」


流れ星は一瞬で儚い。

願い事をすれば叶うって言うけど、そもそも3回唱える時間が無いと思う。それでも兄が一生懸命お願い事してる姿は想像がつくけれど(笑)。


「お金持ちになりたい」


「ははっ、夢があるな!」


「お兄ちゃんは?」


「オレ?俺はね___」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る