第15話 ファンタジー

 とある国立幻想大学における対話式授業の一風景――。


 

 「えいっ」

 手をかざすと氷が舞い上がり、それで敵を凍らせる。

 「そーれ」

 指先からは炎が吹き出し、それで敵を燃やす。

 「やっ」

 仰げば風が起こり、それで敵を切り裂く。

 「とおっ」

 足を鳴らすと大地がうねり、それで敵をボコりまくる。


 

 「まあ、この四要素を操ることが基本中の基本であるといえるでしょう」


 「先生、ぼくは風のかわりに雷を含めるべきだと思います」


 「ああ、それは最終幻想派の考え方ですね」


 「え、それは正統派のはずなんですが?」


 「確かにそれはある意味正統派ではあります。しかし本流とは区別されているのが我々学会の認識です」


 「そうなんですか」


 「ただしそのことは一過性の分類に過ぎないのかもしれません」


 「それが主流になることもあるということですか?」


 「わかりません。私もそれに関しては専門ではないので全く見当がつきませんね。現象論的解釈にはついていくことができたとしても、そのダイナミクスに至ると、恐らく素人のそれとそうは変わらないでしょう」


 「なるほど」


 「本題は“科学と魔法の間における相違性及び類似性について”です」


 「要するに現象に対する解釈ということですよね?」


 「まあ、そのようなものです。ここでは科学的方法論については別の機会にして、先鋭化したところからトップダウン式に始めましょう」


 「よろしくおねがいします」


 「結論からいくと、科学はファンタジーであるということです」


 「ハハッ、ユーモアから入るなんてさすがですね」


 「違いますよ」


 「それでは社会心理的部分を察してのことですか、未知なるものへの心構え、宗教?」


 「いいえ、違います」


 「まったく意図が掴めないのですが、その根拠は?」


 「真空構造です」


 ガタッ。


 真横で頬杖をついていた生徒が立ち上がった。

 質問ぜめを繰り返していた生徒をボコりまくる。

 目じりに残った欠伸のあとが美しく煌めいていた。

 すでにありとあらゆるものが相転移していた。

 



 ――ロマンに魅せられるのは人の性?

 ガタッ。

 「先生、ついにわかりました」


 (今回は特にイミフです 笑

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