第133話 素材
死魔法の実験を始めてから五日ほどが経った。
今では様々な属性魔法との複合を成功し、その死魔法のバリエーションは50を優に超えた。
『…そろそろ配下たちの防具やら武器やらも作らないとな。』
”アイテムボックス”の中に有り余っている海龍の鱗で製作してもいいのだが、お揃いは少し気が引ける。
また、海龍の鱗では鎧と武器しか作れないため、スケルトンウィザードやアサシンなどは職業上別の素材を用意する必要がある。
「…皆に聞いてみるか。グレイ!」
「はっ!ここに。」
「戦闘に携わる配下の皆に装備を作ろうと思うんだが、俺と同じ素材でもいいと思うか?」
「いけません!!ダグラス様が配下と同じものを装備していたらその多大なる威光を示せなくなります…!!」
「なるほどな…」
確かに配下と同じものを装備していたら、誰が王なのかわからない。
戦力のことばかり考えていたので盲点だった。
「ちなみにおすすめの素材はあるか?」
「そうですね…ヒヒイロカネやオリハルコンなどでしょうか?
さらっと高級素材を言ってきた。
そうなった場合商会に購入しに行く必要があるが、数は足りるだろうか。
「結構仕入れるのが難しいと思うが…どうやって仕入れるつもりだ?」
「…?魔族の国ではありふれた素材ですが…」
「えっ!?そうなのか!?」
「はい。これらの素材は魔素の濃いところで産出しますので、魔族の土地ではそこら中にあります。」
「まじか…」
魔族と一緒に生活を始め、食事の必要がないことを知った以来の驚きだ。
こういった文化の違いを味わえるのはなかなか面白い。
「魔族の国で仕入れることになった場合、十分な数を買うだけの金を持ってるか?」
「はい。もし物価が高騰していて足りなかったとしても、魔力で支払えばいいかと。」
「…ん?魔力で支払うのか!?」
「はい。魔力の使い道はたくさんありますので。」
「なるほど…ありがとう。参考になった。」
「お役に立てて何よりです。」
一度魔族の国に行ってみたいと思っていたし、ちょうどいい機会かもしれない。
しかし、完全にグレイのヒモになってしまうことに気が引けるので一旦保留にしておこう。
「グリム。」
「どうしたんじゃダグラス殿?」
「この前のグリム進言を受けて配下の装備を作ろうと思うんだが、俺の装備と同じ素材でいいと思うか?」
「うむ…儂は反対じゃ。ダグラス殿の威光が薄まってしまうからのぅ…」
「グレイと同じ答えだな…」
「グレイだけじゃなく配下全員が同じ返答をすると思うぞい。」
「そうか…」
それだけ配下に信仰されていると思うと、嬉しい限りだ。
「じゃあおすすめの素材はあるか?」
「そうじゃのう…ダグラス殿より少しランクが低い素材がいいかの。」
「例えば?」
「む…ならドラゴンはどうじゃ?ナイトやアーチャーには鱗の鎧を、ウィザードやアサシンには皮のローブを作れるからの!一体倒すだけで仕入れられる計算じゃ!!」
「それはありだな。」
ドラゴンは知性の有無で脅威度が異なり、冒険者ギルドの脅威度ランクを参照すると知性有りはSS、無しはSランクである。
俺ならば倒すのは用意だろうし、その巨体から一体倒せばいいので効率的だ。
倒すとしたら知性無しか害悪な知性有りだけにするつもりだ。
「だが、ドラゴンの生息地は知っているのか?」
「うむ!以前巨人魔王候補者と会談しておったのは火山の麓じゃったな?」
「ああ。」
「その火山の火口はレッドドラゴンの生息地なんじゃよ。」
「おぉ…!!」
あの会談はただムカついただけだと思ったが、意外にも役立った。
…少し癪だが。
それはそうと、ドラゴンの肉は超超高級食材なので一度食べてみたい。
海龍は会話をした相手なので、肉はなかなか食べる気になれず”アイテムボックス”に眠っている。
「ありがとう。参考になったよ!」
「うむ!」
それからリリスとルカに聞いたが、二人はグレイの意見だった。
多数決で決めたらヒヒイロカネとかオリハルコンだが、未だ悩んでいる。
「グレイ!」
「はっ!ここに。」
「グリムの意見は聞いているか?」
「はい。私めも無償で素材を得られるのならそちらの方がよろしいかと。」
「そうか。じゃあ明日レッドドラゴンの生息地に向かう。付いてきてくれるな?」
「もちろんでございます。」
「一応明日に備えて休め。」
「はっ!」
レッドドラゴンの強さはわからないが、俺も対策しておいた方がいいだろう。
明日が楽しみだ。
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