第131話 戦後報告

「ダグラス様、帰還する前に魔王因子の吸収を。」




「そうだったな。…忘れてた。」




さっそく魔王因子を吸収すると、死の魔力が増幅するとともにピロン!!と音が鳴った。




『ん…?何か習得したのか?』




ステータスを見てみると、”死魔法”という項目が追加されていた。


何かの行動で習得条件を達成したのだろう。




『…帰るか。』




俺はグレイを連れてヴァルハラに”転移”した。




「よく帰ったのダグラス殿!」




「ああ。ただいま。防衛戦の様子を聞きたいからこの後玉座に来てくれ。」




「了解じゃ!」




玉座に向かう前、一旦戦闘の跡を見に行った。


ヴァルハラ領には全く損害がなく、”絶対不可侵結界”の外には巨人の焼死体の山ができている。


また、一体だけ目立った傷もなく、山とは離れたところで倒れている死体があった。




『…すごい火力だな。どうやったか後で聞いてみるか。…それにやけに綺麗な死体についても。』




とりあえず巨人達の死体を有効活用するため、”解体”して”アイテムボックス”に収納した。


”召喚魔法”として使ってもいいし、素材として装備に活用してもいいだろう。




大体見終わったので玉座に”転移”すると、既にグリムが待機していた。




「待たせてすまない。色々聞かせてくれ。」




「もちろんじゃ。」




「まず、アンデッド軍の損害は?」




「死者負傷者ともに無し。完封じゃったわい!」




「そうか…」




俺は心から安堵した。


自分で召喚し、名付けした者が死ぬのは少しだが悲しいものだ。




「戦闘の時、何か不便に感じたことはあったか?」




「そうじゃのう…個々の質はいいんじゃが数が足りんな!もっと大勢で攻められたら危ないのぅ…」




「そうか…増やすのはどういった奴がいい?」




「うむ…純粋に上位アンデッドの数を増やしても良いが、下位アンデッドで数を満たすのもよいのぅ!あと奇抜だが他種族の戦力も欲しいわい!!」




「なるほどな…」




純粋なアンデッド軍の方が指揮は高くなりそうだ。


だが、色々な種族の特徴を生かした軍隊を作るのも面白いかもしれない。




「…参考になった。他にはあるか?」




「うむ…やはり装備かのぅ…」




「…俺の失態だ。召喚時既に装備していたものだからてっきり要らないものだと思った…」




そう、”召喚魔法”では既に装備を持った者は召喚されたのだ。


確かにボロボロの装備を着けていたスケルトンもいた。




「それは早めにこっちで何とかしよう。」




「助かるのじゃ!」




「他にはあるか?」




「いや、もうないの!!結構な好待遇で助かっとるわい!!」




「そうか。それは良かった。」




装備は海龍の鱗を加工してもいいし、適当に硬い素材を採って加工してもいいだろう。


好感度上げも兼ねて俺が直接作ることにしよう。




「じゃあこっちから質問だ。まず、あの高火力の魔法はなんだ?」




「ああ、広範囲魔法っていう集団戦闘用の魔法じゃの!!あれは火属性広範囲魔法”インフェルノ”じゃ!」




「その広範囲魔法の発動条件は?」




「同じ属性の魔法30個以上が同時に、かつ同じ場所に行使することじゃの!」




「なるほど…」




以前習得した並列して複数の魔法を詠唱する”並列詠唱”や、詠唱済みの魔法を保管しておける”魔法ストック”を行使すれば、俺一人でも再現できるだろうか。


これは今後の課題にしよう。




「次に、一体だけ綺麗な死体があったんだが…あれはどうやったんだ?」




「それは最後に儂が倒した奴じゃの!死魔法”デスタッチ”で倒したのじゃ!」




「死魔法…?」




先程新たに習得した魔法だ。


偏見だが、謎が多そうだったので身近に使い手がいて助かった。




「そうじゃ。肉体にも精神にも何も傷が残らず、ただそのまま死に至らしめる魔法じゃ。」




「強力だな…代償とか制限はあるのか?」




「普通の魔力では行使できず、死の魔力でしかできないという点じゃの!!」




「そうか…ん?どうしてグリムは死の魔力を使えるんだ?」




まさかグリムが魔王候補者というわけではあるまい。


だとしたら、ノーライフキングの特性か何かだろうか。




「アンデッド系は皆死の魔力を使えるのじゃ!!」




「そうだったのか!」




「例えば怪我を治すとき。他種族は聖属性魔法や回復魔法を使うが、それはアンデッドにとっては弱点じゃ!その時に使うのが…」




「死の魔力…か。闇属性魔法は?」




「それは普通に闇属性魔法が機能するの。アンデッドにとってもデバフはデバフ、バフに変化したりはしないのじゃ。」




「なるほど…?アンデッドは色々と謎が深いな。」




「まぁこれは儂の研究テーマじゃからの!!」




「そうなのか…これで聞きたいことは終わりだ。お疲れ。」




「うむ!ダグラス殿も見事じゃったぞ!!」




「ありがとう。」




とりあえず大きな問題を乗り越えられてよかった。


初の戦争を終え、改善点が明確になったのは嬉しい誤算だった。

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