第69話 スタンピード

一応海王の装備と魔剣レーヴァテインを装備し、全バフをかけて進んでいった。


進むにつれて霧が濃くなり、じめじめと嫌な感じが増していく。




森林フィールドの深部に到達すると、異常事態が起きた。




『なっ!?”気配察知”に反応が止まらない…!?』




”マッピング”と”気配察知”の同時行使で”レーダー”という敵の居場所がわかる地図を作るスキルを習得し、異様な光景を目の当たりにした。




『っ!?深部が魔物で溢れかえってる…!!このままだとスタンピードになりかねないぞ…!!』




スタンピードとは魔物の大侵攻のことで、1体の魔物が王となり他の魔物を操る。


もしこれが発生すれば多くの犠牲者が出てしまう。




スタンピードには厄介な点がある。


それは、スタンピードに関わる全ての魔物が1段階進化する点だ。




スライムのスタンピードで街が3つ滅びたという事例もある。


この際スライムFが存在せず、王はスライムキングAがさらに進化してスライムエンペラーになっていたらしい。




『スライムエンペラーか…そういえば以前ギルドで見た魔物一覧には載っていなかったな…』




魔物ランクも不明なので賢者の石で調べると、どうやらほとんど存在しない個体のようだ。


”物理攻撃無効”だけでなく”魔法攻撃耐性”のスキルも持っていたらしい。


討伐の際には、魔法がかろうじて効いたので世界中から魔法使いをかき集めてなんとか倒したとのこと。




『何とかしてスタンピードにならないよう間引くか…』




”レーダー”の反応は優に300体を超えている。


少しづつその集団近づくだけで”危険察知”の警鐘がかすかに鳴った。




『これは本気で対応しないときついな…』




範囲攻撃で一掃したいので、被害を抑えるため魔物集団の周りに結界魔法”絶対不可侵結界”を展開した。




『よし、行くか!!』




俺は上空に浮かび、集団の真上に到達した。


トロールBとノーブルトロールA、キングトロールSしかいないあたりまだ進化は起こっていないだろう。




『今のうちにできるだけ倒そう…!!』




上空から”メテオ系”の魔法を行使しまくった。


結界内では生い茂っていた木々が粉砕し、魔物の血で染まった。




しかし、”レーダー”の反応は1/3ほど残っている。


トロールは大体倒せたものの他はほとんど無傷だったのだ。




『なっ!?』




ノーブルトロールを”鑑定”してみると、”超回復”と”魔法攻撃耐性”のスキルを持っていた。




『まじか…厄介だな…』




集団の中に切り込むと全方位から攻撃が来るので危険極まりないのだ。


”耐性”は若干とはいえ攻撃が通るので、最悪他の手段が見つからなければ魔法を行使し続けるしかない。




『…そうだ!海王の片手剣を使ってみるか!!』




マルコと話していた時に知ったのだが、属性が付与された武器は魔力を込めるとその属性の遠距離攻撃が可能なのだ。




試しに魔力を込めて1振りしてみると、水属性魔法”ウォーターカッター”のような斬撃が飛んだ。


そして、それが当たったノーブルトロールはスパッと斬れた。




『おぉ!これで解決できた!!』




それから俺は斬撃を飛ばしまくった。


ノーブルトロールたちは地上から投石したりして攻撃してきたが、避けるのが容易いので一方的だった。




『そろそろ数が減ってきたな…でもキングトロールはまだ倒せていないか…』




”レーダー”の反応を見ると、あとノーブルトロールが21体、キングトロールが1体残っていた。




ノーブルトロールは斬撃をあてまくるだけで倒せるのだが、キングトロールは”超回復”の効果が非常に高いようで、1撃で倒さないと一瞬で回復されてしまうのだ。




その後も斬撃を飛ばし、ノーブルトロールを全滅させた。




『あとはキングトロールだけだ…』




地面は俺の攻撃のせいで凹凸や割れ目ができている。


この地面の中でキングトロールを倒しうる1撃を与えるのは難しいだろう。




そう考え、俺は地面に降りる前に土属性魔法で整地した。


キングトロールは知性が高く、俺との1対1を望んでいるようで整地し終えるのを待っていた。




『…いくぞ!!』




俺は先に先に攻撃を仕掛けた。


キングトロールはどっしりと構えて巨大な刃物を持ち、こちらを睨んでいる。




流石トロールの王といった威圧感だ。



それでも俺は物怖じせずに進み、即死させる確実な1撃を与えた。




『最期まで堂々としてたな。…ん?』




斬ったすれ違いざまにキングトロールに1撃をもらっていたようで、海王の装備にかすかに跡がついていた。


それも、的確に俺の心臓の位置に。




『もしキングトロールと互角の装備だったら相打ちだったな…』




そう思うと、ぞっとした。




倒したすべてのトロールから”鑑定&略奪”をし、”超回復C””魔法攻撃耐性D”、”魔法攻撃無効F”を獲得した。


そして俺は木々が粉砕した森林深部を後にしてギルドに報告に向かった。




「あ、ダグラス君!まだ正午過ぎだけどクエスト終わるの?」




「バーバラさんに報告がありまして…」




それから俺はバーバラさんにスタンピードが発生しかけていて、殲滅済みであることを説明した。




「この街を救ってくれるのは2回目ね…本当にありがと~!!」




「いえいえ。守れてよかったです。」




報酬として、また商会の金券の金額が上がった。




『企業拡大に助かるけど使いきれるかこれ…』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る