第66話 エンチャント

翌日、俺は朝食をとってすくにマルコの隠れ家に向かった。




隠れ家に直接”転移”すれば一瞬で着くのだが、実は危険なのである。


なぜなら、”転移”した先の座標が岩や土の中だった場合即死するのだ。




『まあ俺は”マッピング”のおかげで行ったことがある場所の座標は完璧にわかるけどね…』




それでも怖いので鉄の扉の真上に”転移”した。


そして、例の通りに仕組みを解いて中に入った。




「ようダグラス!待ってたぞ!!」




「できたのか?」




「ああ!!エンチャントも最高の出来だ!!」




「そうか!!」




俺はマルコの案内のもと鍛冶場に来た。




「着いたぞ!これだ!!」




「おぉ…!!!!」




見た目は前回見たときと同じだが、”鑑定”をするとたくさんのエンチャントが付与されていた。




全ての装備に”耐久力SSS”と”自動修復SSS” が付与されており、さらに


片手剣と短剣×10には”斬撃強化SSS”が、


盾には”衝撃軽減SSS”が、


防具には”衝撃軽減SSS”、”ダメージ軽減SSS”が付与されていた。




「どれもSSSランクのエンチャントなんだな…」




エンチャントは大変高度な技術なので、たとえSSSランクだとしても失敗してSSランクで付与してしまったりするケースが多々あるのだ。




「海龍の鱗が魔力を通しやすい性質でな、簡単にできたわい!!」




「よかったな!それで、エンチャントの詳しい説明をしてくれないか?」




「分かった!まずこれは…」




まとめると、


”耐久力”:装備の耐久色が大幅に上昇し、滅多なことでは壊れない。ただし、攻撃力が少し低下する。


”自動修復”:装備に傷がついた場合、自動で修復する。ただし、修復にはMPを消費するので直したい装備に魔力を流す必要がある。


”斬撃強化”:斬撃の威力が大幅に上昇し、ほとんど全ての物を斬れる。ただし、耐久力が少し低下する。


”衝撃軽減”:受けた衝撃を大幅に軽減し、ほとんど全てのノックバックを無効化する。ただし、耐久力が少し低下する。


”ダメージ軽減”:受けたダメージを大幅に上昇する。ただし、耐久力が少し低下する。




といった感じだ。




「それぞれ欠点を補いあうように付与してくれたのか?」




「ああ!そうしないとすぐに壊れてしまうからな!」




「なるほど…」




おそらくこのランクの装備は世界中を探してもほとんど見つからないだろう。


マルコに出会えて本当によかった。




「ダグラス、頼みがあるんだがいいか?」




「なんだ?」




「保存用の武器とは別にワシの装備も海龍の鱗で作りたいのだが…もちろん金は出す!!」




「今後も贔屓にしてくれるなら金は要らない。」




「本当か!?」




「ああ。もっといい素材を獲得してもマルコにしか扱えないだろうしな。」




「感謝する!!ワシももっといい素材を得られるのはダグラスしかいないだと思ってたからちょうどよかったわい!!」




「ああ!任せておけ!」




「期待してるぞ!!!」




「ところで質問なんだが、SSSランクの素材を作れるってことは金槌のランクは…?




「…実はワシも詳しく知らぬ。せっかくだから見せてやろう!」




俺はマルコから金槌を受け取った。


それは凄まじい魔力を帯びており、金槌を見ているだけなのにまるで絶対的強者と対峙しているように感じた。




「くっ…!!はぁ、はぁ…」




俺は金槌の圧に耐えきれず、息が荒くなった。




「おいダグラス!!大丈夫か!?」




「…ああ。金槌に気圧されたよ。それにしても、マルコはよくこれを使えるな!」




「ワシも凝視したらそうなるわい!!よくその程度で済んだな!!」




「そうだったのか…」




「これは何の素材かマルコでも知らないのか?」




「詳しくは…ただ、これは古代龍の牙で作られたと言い伝えられてる。」




「なっ!?古代龍だと…!?」




遥か太古の時代、この世界では3つの勢力が争っていた。


それは”神”と”悪魔”、そして”古代龍”だ。




神龍は太古の時代、古代龍を原型にして神によって創造されたらしい。


古代龍は今でもどこかで生息していると言われている。




ちなみに魔族や魔物は悪魔が、それ以外の種族は神が創造したとされている。




『もしかすると海龍が負けたって言ってた海獣リヴァイアサンは古代龍かもしれないな…』




「どうしたんだダグラス?急に静かになって。」




「ん?あ、ああ。ちょっと考え事をしていた。俺も”鑑定”してみていいか?」




「やめておけ。今までこの金槌を”鑑定”した奴は例外なく死んだ。おそらくさっきダグラスが感じた圧が原因だ。」




「そうか…分かった。」




素材を少し凝視するだけでこのありさまなのだから、深くまで見たら間違いなく死ぬだろう。




『…恐ろしいな。”鑑定”はなんでも詳しく知れると思っていたがこんなデメリットがあったのか…』




海龍の時は実力が拮抗していて本当に良かった。


これからは自分より圧倒的に強いと感じる生物の”鑑定”は控えることにした。




それから俺はマルコと鍛冶について話してから屋敷に帰った。


本を読むよりも多くの重要な情報が得られたので有意義な時間だった。




『そういえば王都を出発してからそろそろ1ヶ月が経つな…一度戻ってみんなの様子を見てみるか!!』




今日はもう夜なので明日行こうと思う。




『抜き打ちでこっそり視察するか…!!』




明日が楽しみだ。

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