第53話 パーティークエスト

ハワードの鍛冶屋を出ると、もう正午直前だった。




『まずい!!待ち合わせが!!』




俺は人目のつかない路地裏に入り、ギルドの近くに”転移”した。


そして何とか時間内にギルドに入った。




「あ、来ましたよ。彼がダグラス君です。」




「ぎりぎりになってしまってすみません。ダグラスです。よろしくお願いします。」




「俺はこのパーティー”疾風迅雷”のリーダーを務めている魔法師のジャックだ。よろしくな!」




「私は副リーダーで細剣士のサリアよ。よろしくね。」




「俺は重戦士のモローだ!よろしくなダグラス!!」




「私はヒーラーのソマリですぅ…よ、よろしくお願いしましゅ!!」




あ、ソマリさん噛んだ。




「最後に俺は軽剣士のブルーノだ!よろしく頼むぜ!!」




「よろしくお願いします皆さん!」




変に上下関係を気にする人などがいなくてよかった。


俺は前世の体験でそういう人が苦手なのだ。




そう、あれは高校1年の頃。


俺は高校生活というものに憧れ、胸に期待を寄せて生徒会に入った。




しかし、実態は教師たちの犬だった。


俺は”生徒会役員”という肩書を天秤にかけられてこき使われたのだ。




…思い出すとイライラしてきた。


でももうそんな人たちは俺の周りにいないから関係ない。




「ダグラス君ちょっといいかな?」




「はい。なんですかテレサさん。」




「実は”疾風迅雷”の人達はダグラス君の力のこと知らないから手加減してほしいの…」




「分かりました。」




「なんて言われたんだ?」




「”疾風迅雷”の皆さんをよく見て勉強しなさいと。」




…まあ今でっち上げた嘘だが。




「そうか!じゃあ早速クエストを受けてみる?」




「…俺はリーダーに任せます。」




「じゃあ受けよっか!」




リーダーは”トロール討伐”を引き受けた。




トロールは巨大で強力な魔物だ。


皮膚が非常に硬く、傷をつけても再生能力が高いためすぐに回復されるらしい。




「最初はダグラス君は休みでもいいかな?」




「…?わかりました。」




「先輩としてかっこいいところを見せたいんだ!!」




「わかりました!楽しみにしています!」




「そう?ありがとう。」




トロールは湿気の多い森林の奥深くに生息しているそうなので、早速森林へ向かった。


その道中、




「リーダー、質問いいですか?」




「どうしたんだダグラス?」




「パーティー名の由来って何ですか?」




「ああ、それはね。元々このパーティーは俺とサリアの二人だったんだ。


俺は雷属性魔法を、サリアは素早く細剣で攻撃をすることから取ったんだ。」




「なるほど…それはますます見るのが楽しみになってきました!」




「そんなに期待されるとちょっと困るな…あはは…」




それにしても”雷属性魔法”というのは初耳だ。


今度時間ができたら探して鍛えてみようと思う。




「そろそろ生息地だね。ここからは集中していこう。」




「分かったわ。」




さっきまでほんわかした雰囲気だったのに、一瞬にして全員が集中して臨戦態勢になった。




『すごい切り替えの早さだな…』




感心していると、”気配察知”スキルに反応があった。




「みんな、止まってくれ。近いぞ。」




ブルーノがトロールの気配に気づいた。


ブルーノの発言を聞くとすぐに皆陣形を整えて後衛職は詠唱を開始した。




「3、2、1、行くぞ!」




リーダーの掛け声のもと皆はトロールのいる方角へと飛び出し、遭遇した。


そしてトロールが皆に気づいて攻撃を仕掛ける前にリーダーが雷属性魔法で攻撃して”スタン”させ、その隙に前衛が攻撃を重ねた。




戦闘は順調に進み、無傷で完封勝利した。




『すごいな…連携に無駄な動きがなかった…』




力量はマークたちと互角くらいだろう。




「ダグラス、どうだった?」




「すごかったです!動きに無駄がなくて完璧な連携でした!!」




「そうだろ?俺たちは今まで何回も一緒に死線をくぐり抜けてきたからな!!」




「じゃあ次はダグラスも混ざってみようか。特異な武器は?」




「片手剣と盾です。」




「じゃあ軽戦士に近いからブルーノと交代してみて。」




「分かりました。」




「俺が教えてやるよ!ドンってやってバンってこうだ!」




「あ、ありがとうございますブルーノさん。参考(?)になりました。」




「おう!!」




それからしばらく森林を歩き、またブルーノが発見した。




「ダグラス、準備はいいか?」




「はい!いつでも行けます!」




「いい返事だ。さっきと同じように始める。3、2、1、行くぞ!」




俺はリーダーのカウントダウンが終了し、雷属性魔法でトロールがスタンしてすぐにトロールに一撃を与えた。


正直一撃で倒せるが、力を隠す必要があるのでただの鉄の剣Cで戦った。




すると、それが実にいい感じだった。


トロールの皮膚を若干切り裂くくらいで、切断したり剣が折れたりもしなかった。




『今後パーティーに参加することになったらこのスタイルで行くか!』




それから順調に削っていき、ついに倒すことができた。




「成功だ!よくやったダグラス!」




「ありがとうございます!!」




「これはブルーノよりも連携が取れてるかもな!あははっ!」




「そ、そんなことないですよ!ブルーノさんの方が何倍もすごかったです!」




「そ、そうか?ありがとな!」




その後も順調にもう3体倒し、クエストを達成できた。

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