第28話 遭遇

翌日、午前はメリルが運営してるという”メリル魔道具店”に向かった。




「いらっしゃいませー…ってダグラス!」




「おはようメーア。ダンジョンに潜ってて不便なことがあったから魔道具買いに来た。」




「不便なことって?」




「ダンジョンの中にいると時間がわからないことかな。」




「あーそれならあるよ?」




「本当か…!?見せてほしい!」




「ちょっと待っててね。えっと…あ、あった。」




「腕輪か?」




「うん。これは最初に時間を指定して、その時間になると腕輪の上についてる水晶が光るようになってるんだ!


ただ、一度時間を指定すると魔道具取り扱いの人しか変更できないから気を付けてね。」




街でこれを付けている冒険者が多かった気がする。




「いくらだ?」




「相場は銀貨5枚だけど友達割引ってことで3枚でいいよ!」




「ありがとう。じゃあそれを買おうかな。」




「毎度!また何か必要なものができたら来てね!何なら用事がなくても来ていいよ?」




「ありがとう。暇なときに来るよ。」




「了解!じゃあまたね!」




「ああ。また。」




一度宿に戻って昼食を済ませ、昇格試験に向かおうと思う。




「あ、おかえりダグラス!これから昇格試験だよね?これで元気つけてね!」




「ありがとう…頑張るよ!」




サービスで量をいっぱいにしてくれた。




『そういえば俺今日が昇格試験だって言ったかな…?まあいいか!』




ギルドに着いたが、他の受験者は見当たらなかった。




「あ、あの。昇格試験の他の受験者は…?」




昨日クエスト報告をした職員がいたので尋ねた。




「ああ、そっか。ダグラス君は王都に来たばっかりだもんね。ここでは個人で受けるんだよ。」




「そうなんですね。」




「あ、早速ダグラス君の試験官が来たわよ。」




「お前が受験者か!俺は”陽炎の辻”所属Bランク冒険者のヘンリーだ。よろしくな!」




「ダグラスです。よろしくお願いします!」




「同じ冒険者なんだから敬語じゃなくていいぜ!」




「分かり…分かった。今日はよろしく。」




「じゃあ早速ダンジョンに行こうか。」




「ああ。試験内容はなんだ?」




「ダンジョン4層への到達だ。」




「了解。」




色々説明を聞きながら歩き、ダンジョンに着いた。




「今から試験を始める!基本的に俺は手出ししないからそのつもりで。」




「分かった。じゃあ行くぞ!」




俺は昨日仕上げた”マッピング”を見てなんの迷いもなく進んだ。


途中でスライムが出てきたが、こちらに気づく前に仕留めた。




「やるなぁ…」




「ありがとう。」




1層を攻略し、2層へ続く階段に着いた。




「ダグラス、休まなくて平気か?」




「ああ。全く疲れていないからな。」




「そうか。分かった。」




2層では生憎3層までのルートにゴブリンがいなかったので、戦闘をせずに済んだ。


何か嫌な予感がしたので3層へ続く階段で一度3分ほどの休憩を取った。




「ヘンリー、もう休まったので再開してもいいか?」




「ああ。好きなタイミングで始めてくれ。」




3層の中央辺りに着いた頃、突如として”危険察知”スキルがかすかに鳴った。




「ヘンリー、まずい!」




「どうした?」




「俺の”危険察知”スキルが鳴りだした!この層で鳴ったってことはおそらく階層移動してきた奴がいる!」




「本当か…!?個体によっては俺らだけじゃ収集が付かなくなるぞ!」




「ああ。試験をやめて急いで戻るか?」




「そうだな。ダグラスは急いでギルドに伝えろ!俺は偵察してくる!」




「分かった!」




だが、もう手遅れだった。


後方にコボルトキングAが現れたのだ。




「おいヘンリー、俺たちでこいつを倒せるか?」




「単体だとBランク冒険者3人でやっと倒せるかどうかってとこだな…俺たちには荷が重い…」




「この窮地を脱する方法がある。…今から言うことは内緒にすると約束してくれるか?」




「分かった。」




「実は俺は訳あって力を隠してる。このままだとまずい。だから俺は今からその力を使う。」




「分かった。約束する!」




「ありがとう。じゃあ行ってくる。ヘンリーは少し離れていてくれ。」




コボルドキングは知性を持っているからか、話し合いが終わるまで待っていた上に一騎打ちを受け入れた。




「では行くぞっ!」




俺はコボルドキングの力を試すように片手剣スキルのF~Bを順番に行使した。


やはりすべて防がれた。




だが、相手も同様に俺の力を試すようにF~Bの両手剣スキルを行使してきた。


すべて盾でいなしたが、まともに受けると力負けしそうだ。




相手が同じスキルばかり使うので防御に飽き、”鑑定”をした。


すると、相手の両手剣スキルはBだった。




『この程度か…まあコボルドキングの強みは手下を操ることだしな…』




昨日俺が殲滅したからこの層に手下がいなかったのだ。




昨日手に入れたゼフソードの試し切りのいい機会だ。


ゼフソードでとどめを刺すか。




片手剣スキルA” デッドリーブレイク”を行使すると、9連撃のうち1連撃目で俺のゼフソードが相手の武器を真っ二つに切り、残りの8連撃を切り刻んだ。




『切れ味すごいな…買ってよかった。 』




コボルドキングを倒すと、ヘンリーが駆け寄ってきた。




「ダグラス!お前は命の恩人だよ!神に誓ってお前の力のことは言わない!」




「ありがとう。」




「ただ、ギルドに経緯を話さないといけない。だから少しばれてしまうかもしれない…すまない…」




「気にするな。それよりもあの守護者が帰ってくる前に早く帰ろう!」




「あ、ああ!そうだな!」




その後、何事もなく無事にギルドにたどり着いた。

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