久しぶりの配信は
「はい、皆さんこんばんはー!音量とか諸々、大丈夫ですか?」
と始まった『√』チャンネルの配信。配信タイトルは『ざつだん!!』だ。配信自体久々、雑談はもっと久々、と、続々とリスナーたちが集まってくる。
「皆、『花、夏の宵』は聴いてくれたー?……っと、聞く前からそのコメントだらけだ」
と環が言った通り、コメント欄は『花、夏の宵』の感想で溢れかえっていた。
中には、『配信久々で嬉しいけど、何かあったんか?』というコメントも。
「したいのは山々だったんですが、学生にはテスト期間というものがありまして……」
と夜月が答える。少し前まで、2人が通う高校でも夏休み前の期末テストが行われていたのだ。
『ここ10年で聴いた曲の中でダントツ1位』
『tama君もyoruちゃんも頑張ってた!!』
『なるほど、テストかぁ……2人とも凄すぎて学生なの忘れる』『←いやそれ』
『What wonderful song and illustration!!』
『次の曲が待ちきれない』
と、配信開始からリスナーのテンションは高く、視聴者数も5万人に届きそうな勢いである。『花、夏の宵』のMVは周知の通り東アニが「本気で」手掛けたものであり、和、日本らしさが要所に入ったそれに海外からの評判も上々だ。ヘタをすると日本のリスナーよりテンションの高い海外勢のコメントもそこかしこで見られる。
「んよーし、雑談するぞー!!」
「「おおー!!」」
と、実は1番テンションが高かったりする兄妹が音頭を取り、雑談開始である。
『歌も歌詞もメロディーもMVも全部最高でした!!』
「「ありがとう!!」」
『今日本屋で流れてました!テンアゲでした!!』
「あ、それ僕もだ。もしかしたらすれ違ってたかもね!」
『今回歌ってみてどうでしたか?ていうか、あの曲難しくないですか??』
「ほんとに難しかったですよ!曲渡されて最初に聞いた時、Ayaさんの頭おかしいのかと思いましたもん!」
「めっちゃ練習してたもんねー、文句混じりだったけど!」
「そうそう、『ねえこれ歌うの?ねえほんとにこれ歌うの?』って」
『私の頭がオカシイとか言う発言がこの配信から聞こえたんですが、今なら自首すれば許しますよ^ ^』
(Ayaさんがコメントしました)
「「あっ」」
というコントも途中に披露しつつ、和やかな雰囲気で配信は進んでいく。そしてそんな楽しい時間とは過ぎるのが早いもの、というのが世の常だ。
「えっ、もう2時間経ってる……!今日は早かったなぁ……!」
「ほんとだ〜!今日はいつにも増して、だったね」
「……じゃあ、今日はここらへんで、そろそろ終わりましょうか」
「うん、そうだね!それじゃあ皆さん、良い夜を〜!」
と、無事に配信は終わったのだけれど。
実はこの2人、嘘というか一つ、誤魔化していたのである。誤魔化した、というのはこの発言。
「したいのは山々だったんですが、学生にはテスト期間というものがありまして……」
実はテスト期間……期末テストはとっくの1週間前に終わっていたのである。それなのに配信をしなかったのは、2人で出掛けて遊び倒していたからだったのだ。
きっかけはテストが終わった日の夜。兄の部屋に訪れた夜月の発言からだった。夜月は高々とドアを開け放ち、
「お兄ちゃんには、妹を遊びに連れて行く義務があります!!」
と言ったのだった。勿論環はポカーン、として、
「え、なんで?いや、いいけどさ」
と返答する。ここで夜月、理由を何も用意してこなかったのである。何で、と聞かれると、兄がボイトレなどで一緒にどこにも行けない期間がそのままテスト期間に突入したから。つまり、夜月が環に甘えたかったというだけの話なのだが。
「いやっ、ほらっ、テスト終わったしいいかなーってだけっ」
結局出てきたのは、そんな当たり障りのないものだったのだけれど。
環は3秒ほど考えた後、ニヤリと笑ってこう答えたのだった。
「…………どうせなら、遊び倒そう」
結果、兄弟のデート(夜月視点)が増え、配信が無くなったという次第であった。環の言った通り、遊び倒した後に我に返った夜月が恥ずかしさから誤魔化したのが、「テスト期間だった」というわけだった。
まあ、この後その辺りの事情を知っていた運営から
『お二人とも、デートは楽しかったですか?』という爆弾をつぶやいたーに投下され、リスナーに暴露されたのだったが、それはまた別の話だ。
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作者より
次回は兄妹のデート回となります。作者は行ったこともないデートを上手いこと書けるのか!?レディ、ファイッ!!
最近聴いている曲を紹介したらどう?というコメントを頂いたので、それをやろうかな。
BUMPの『small world』です。リリースされたばかりの曲です。作者がBUMPを語ると止まらないので、聞いてみて下さい、とだけ。やる気が出ない朝なんかは、『ホリデイ』なんかどうでしょう。
それではまた、お付き合いくださいませ。
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