急転と邂逅
『朝はぜさんがつぶやきました』
「っ……っう……」
言葉にならない思いが、夜月の中で渦を巻く。
『この件及び絵師の方への憶測での批判、拡散等はおやめ頂くようお願いします』というたった一文が、胸を暖かくしてやまない。
そして、朝はぜ先生は自分のリプライ欄に続けて、
『トレスした絵って構図に反して線が下手だったりするものだけど、この話のイラストは全然そんなことないです。ちゃんと描いてきた人の絵です』
と、書いてくれていた。
堪えようとする涙はとめどなく流れて、それなのに涙は温かくて、そのまま私はしばらく泣き続けたのだった。
しばらく考えた僕は、夜月にこう言った。
「朝はぜ先生にDM送ってみない?」と。
ありがとうございました、と、もう一つ。手前味噌というか、ちょっと身勝手なお願いなのだけど。
それを聞いた夜月は「えぇえ〜……?」と言った後、それでも「でも、そうしてもらえたら『√』ももっと見てくれるかもだしね…」と同意した。
「よし、そうと決まれば善は急げだ」
僕はそう言って、夜月と朝はぜ先生へ送るDMの文面を考え始めた。
つぶやいたーのメッセージに通知が来ているのを見た『朝はぜ』こと和泉は、その送り主に目を見開いた。
「……『√』!?」
送られてきた文面は、次のようなものだった。
「朝はぜ先生、はじめまして。WeTubeで歌ってみた動画を投稿しているユニットの『√』と申します」
「『√』のイラスト担当が、先程先生がつぶやきで触れて下さった者でした。本人もトレス疑惑については再三反論しましたが謂れない中傷が多く、当時のアカウントは削除したのですが、先生にもご迷惑をお掛けし、申し訳ありませんでした」
「また、先程は先生からこの件に関してお言葉を頂き、メンバー共々深く感謝しています」
「最後に、厚かましいお願いなのですが、私達『√』に関して、つぶやきを作成して頂けないでしょうか。もし宜しければ、ご都合の良い時に再度ご相談させて下さい」
「よろしくお願いします。長文失礼しました」
最後まで読み終わった後、混乱した頭でそれでも、
「失礼なんですが、WeTubeの『√』と同一の方が運営されているアカウントでしょうか?」と聞いた自分を和泉は褒めたくなった。
すぐに返信が返ってきたけれど、「どうしたら証明できますかね…?」というものだった。
和泉と、環&夜月、考えること数分。和泉は手を打ち合わせて、「声!声なら私、さっきまで『√』さんの配信見てましたので、分かります」と送信した。
通話の算段をつけること、さらに数分後。和泉は緊張した面持ちで応答ボタンを押した。
「……もしもし、『√』のtamaです」
「えっ、と、『√』のyoru、です」
最初の声が、先程まで聞いていたその歌声と完全に重なった。元から和泉はほとんど疑っていなかったけれど、万が一ということもあり確認したのだった。
「……もしもし、朝はぜです」と応えたあと、和泉は続けて、
「まずはyoruさん、ごめんなさい。私がもっと早くに言っていたら、こうならなかったかもしれなかった。本当にごめんなさい」と謝った。
慌てたように夜月は、
「そんな、朝はぜ先生のせいじゃないです…!さっきのつぶやきだけで、それだけで十分すぎるくらいです」と答える。
そのまま話すこと数分。3人は少しずつ打ち解けた雰囲気で話しはじめた。
「私、今回の件の前から『√』のファンなんですよ!私BUMP好きなので、『アカシア』がおすすめに流れてきて聞いたらもう、即ファンでした」
「えぇー、ほんとですか!?めっちゃ嬉しいです……!」
それに和泉は、どこか悪戯っぽい声で応えて、
「もしかして、さっきのDMのお願いって、それを……『√』がすごいよ、ってつぶやけばいいやつですか?」
と、2人に聞いた。環と夜月は声を揃えて、「えっ…!」と驚いた後、首肯する。
「厚かましいとは思ったんですけど……ダメですかね?」
と環が言うと、和泉は笑って、
「全然!しますよしますよ、それくらい。後でつぶやく前に文面送るので、確認してください。そうですよね、私から言えば多分平和になるでしょうし」
と快活に言った。環と夜月が何度目か分からないお礼を述べると、和泉は次にあることを言ったのだけれど……それは、この先『√』が辿っていく道を大きく変えたものだった。
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作者より
星…ほしい…(200目前で足踏みしたタイプの作者)
と、物乞いはここら辺にしておきまして。
今後の『√』の歌ってみたや、配信の様子を作中で書く中で、皆様の好きな曲を参考にしたいなと思いまして…。何せ、作者の音楽の趣味、偏っているのですよ。感想で書いて頂くと、作中で環くんが歌うかもしれません。よろしくお願いします。
(明日2話投稿すると思われます。一話のみの場合、作者は死んでいますので責めないであげて下さい)
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